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ライカ トリエルマーM ASPH 28-50-35mm F4

ライカの新世代レンズの回答

写真はベッサTにトリエルマーを取り付けた姿。かなり大きなレンズなので大きなM5との組み合わせがバランスが取れる=ただし28mmのフレームは出ない(まれにM4−PやM6のフレームを組み込んだ改造M5がある・・・当然純正と非純正が存在する)。フルフレームが28mmとほぼ同じである。M6等との組み合わせでは少し落ち着かない。90mmクラスの望遠を着けたと思えば良いのだが、ワイド〜標準レンズを着けていると、どうしても考えてしまうのである。しかしこれは見た目と持った感じだけで、使い勝手は少し前下がりになるぐらいで何の問題もない。あるいはヘキサーRFのファインダー倍率とモーター駆動と切り替えのスピーディな3焦点レンズの組み合わせが、撮影のリズムの良さで最適とも思われる。

さて、私は以前にも書いたとおり、プレミアのついたレンズや高価な特殊レンズはほとんど所有していない。L−Mマウントの新旧各社のレンズを合わせて130本程持っており、それは12mm-240mmをカバーしているが、一本として実用レンズの範疇を越えないものである(ビゾ用の長い2本を除く)。その中で最も高価なレンズがトリエルマーである。1999.4に227,000円で買った。少し迷いもあったが、このレンズの革命性とライカに主力を移すまでキャノンFDの高性能ズームを常用していたこともあって、購入に踏み切ったのである。ではどこが革命的なのか?

それは 1./フレームの自動切り替え機能を利用した3焦点レンズであること 2./やや暗いものの開放値のF4固定を実現したこと 3./長さはともかくとして比較的コンパクトに仕上げられ、ライカレンズのデザインコンセプトの範囲内で完成させたこと 4./描写性能も単体レンズに遜色無く(と云っても最良クラスのレンズと比べるのは酷であり、一世代前のライカレンズと比べてとしておこう)、充分実用の範囲内であること。などがあるのだが、それ以外にその高価さも3本の単体レンズを買うよりは安いことも理由である。ただしこれらの表面的な事以外にも大切な要素があることを忘れてはならない。ライカはその保守性や開発の機動性のなさから、マニアや一部の特定の撮影目的を持っている人たちのみを対象としているように感じられるが、それは間違いで、いつも真剣だと言うことをこのレンズでも立証している点である。残念ながら、量産されあらゆる人達に満足してもらえる製品造りという点では日本の各メーカーに敗北して久しく、目的をある程度絞って開発・販売しているのだが、現状はライカにとって相当に厳しい。ライカブームになる程厳しくなるのである。RF機の勝負がついて一人旅となった1960年代後半から1970年代後半までの間は経営危機を何度も経験するほどに落ち込んだが、その良さが見直され、その後は逆に競争相手のなさを利して好調な売り上げとなった。バブル期を経てある種のブームとなり、ライカも大きな利益を日本において出しただろう。日本ではこの間に機能の自動化が進み、カメラの機能の追求と言う点で極限まで(と言っても際限はないが・・・)達し、豊かさと共に趣味性の強い商品を求めるようになったのだろう。この辺の事情は時計・車でも同じ。メーカー間の競争でこの20-30年でカメラは国際競争に勝ち、日本のカメラの水準がイコール国際基準になったこと、日本のメーカー間での競争で、その中でも一握りのメーカーが基準になったことは誰にも理解できることだろう。「ライカは神様」とコシナの社長は言うが、実はそれは精神の中のことで現世の娑婆ではニコンが、キャノンが神様になったのである。

私は私自身の目的に叶ったカメラとしてライカを評価しているが、一般論として考えるとどうも分が悪い。最良の選択を示すなら、AFの問題を避けて(私はAF機はEOS1.10.100.Kiss、旧ヘキサー、IXY、サムライしか知らない=そしてこのHPでは最初の公示どおり、たとえ良い機械であってもAF機は取り上げない)考えるとニコンF3かペンタLX(これらも終わった)、コンタックスRTSに落ち着いてしまうようである。もう一方で(これがライカにとって深刻な問題になる)ブームにのって最後の砦「RF」に日本のメーカーや商社が挑戦を開始した。戦後すぐからの第一次のライカブームは明らかに「ライカに追いつけ!」だったが、今度は違う。ライカをとっくに越えた巨人たちが立ち上がったのである。最初はおずおずと(商売にならないと具合が悪い)そして次にはっきりと姿を現した。それはフジの645のレンジファィンダー機、マミヤの6、7あたりから始まり、コンタックスG、限定版のライカマウントレンズ群、フジTX−1、コシナ・フォクトレンダー、ヘキサー、ニコンS3復刻版と続いていく。勿論、これで終わりではない。価格差と神話と機能の足枷がある分(アサヒカメラ2000/1参照)ライカは不利である。性能のどれをとっても好みの問題を除けば価格差が大きな障害になる。レンズは現行の物を比べると色々云わねばならない事があるが(とても厳密でデリケートな話)、一般論としてみると問題は価格だけと言えよう。私のテストでも個性の差は当然あるとしても、画質自体にはほとんど差がなく、国産が凌いでいる部分すらある。それでいて価格は2−3倍程度(あくまで買値、定価ではもっと差が出る。併行輸入を禁ずるとライカは倒れるかも・・・)と比較することすらはばかられる。価格差で2倍に満たないヘキサノンレンズ群も今後(今もそう)苦戦を強いられるだろうが・・・(限定版のレンズ群は珍しさと造りの良さである程度成功した)。

焦点はフォクトレンダー=コシナである。アサヒカメラ2000/2月号のキャッチコピーにも「ライカキラー」となっているが正にそのとおりである。今まで出されたレンズ(ノクトン35mmを除く)はすべてテストの結果(詳細は後日)ライカと同等に近いの性能が確認されたし(プロ的な使用は別=印刷物に関してはまだ差がある)、次のボディ・レンズも含めライカの顧客を食うことは必至である。皮肉にもライカはブームで儲け、そのブームで窮地に追い込まれているのである。勿論、一方でブームといっても、いつも指摘するように中古市場でライカの様々なレンズ、ボディが少しづつ値を上げながら回っているだけという実態もある。私は(そして幾ばくかの人々は)それでもライカを選ぶが、多くの人達は他の選択をし、大勢はここ数年で決するだろう。危惧をもって見ているのは私だけではないはずである。ヘキサーRFが出たとたんM6TTLが19万円を切ってしまった(勿論併行品。その後更に下落し、2000/3に18万円を切っている・・・2000/12では16万を切った。2002年初頭では18万程度)のである。前の解説で述べたように、案外ライカユーザーの多くがCLEを所有し結構よく使っていて、AE機の要望は表面化しているより大きい(ライカファンはプライドが高いのであまりその点を声を大にして言わない傾向がある)。ヘキサー、ベッサR、安原一式には行列ができているのにM6は価格が下がる一方(M6TTLになった時の失望も関係ある)である。ライカの好きな人は皆M6を既に持っており、別の機能の機械が妥当な値段で欲しいのである。かくして危機的な状況を察知し(具体的には最近だが、日本で開発・製品化されるまでに何年もかかっており、ライカも以前から承知していたのだろう)、M5の時代と同じく、最大限の開発努力を払ったものの一つがこのトリエルマーであると考えているのである。たかがレンズ1本にここまで考察する必要もない(写真家としての私はそう思う。よく写ればそれでよい)が、研究というものはそんな物である。 1.非球面化と 2.アポクロマート化、そして試されたもう一つが 3.多焦点化である。これは個人的にも一般的にも何種類かのバリエーション(たとえば35−75、28−50等の2焦点が使いよい)があっていいと思うが、ライカはそう思っていないようである。ライカはそれに対してアサヒカメラ2000/1で、大型化するので考えていないと述べている。ここでも神話の足枷がある。ファンに強制されたものでなくライカ社内部にそういう価値観が徹底されているのであろう。ライカブランドは生き残るだろうが、ライツ・ウェツラーが消えた1988年の二の舞にならぬようライカ社にも期待したい。たぶん今年(2000年)の末には新レンズのラインアップも終わり(28mm.50mm.75mmが以前からのタイプのままだが、50.75は秀逸なものなのでしばらくこのままだが、28mmは変更されるだろう=現行品では性能的に日本製の最近のレンズに追いつかれている=そしてなんとズミクロン28mmとなった!)、ライカも言外ににじませているように、それほど遅くない時期にM7か他のシリーズ(new-CLE?=「コンパクトなMマウントボディ」=その前にM6EたるM7が2002年に出てしまった)のMボディかが発表されるだろう。日本のメーカーからも幾ばくかの新商品が出され活況を呈することは予想される。ライカ社危機説が単なる噂に終わって欲しいものである。

長い前置きとなったがトリエルマーの操作・性能について語ろう。
長さ、径は90mmクラスのレンズとほぼ同じ。重さはレンズ枚数が多いせいか最近のライカレンズとしては重い。デザインは現行の他のレンズの延長線上にあり、違和感はない。ライカは保守的なファンを大切にする。仕上げの重厚感も良好と言えよう。ブラックとシルバーがあるがシルバーはあまりに派手で私は持つ気がしない。好みの問題と別にシルバーは梨地の表面仕上げの具合(昔のクローム仕上げとはかなり異なるが)により手の脂などの汚れが目立ち、他のシルバー仕上げのレンズと同じく合理的と言えない。その上材質が真鍮となるため重く、値段も高いので勧められない。ちなみに現行の仕上げのシルバーレンズのうち所有しているのはエルマー50mmF2.8のみである(これだけはブラックの場合、沈胴を伸ばした時に見える内鏡胴のシルバーとレンズ外側の黒にコントラストがありすぎ、見た目が悪いためシルバータイプとした=その後やはり重さが気になって黒も入手した)。

次に操作性を見てみよう。デザイン的は上から絞りリング、焦点距離の変換リング、ヘリコイドリング(直進)の順にほぼ同じ意匠と太さで統一されシンプルだが、操作性としては全部同じであるのは慣れないと間違う事があるだろう。絞りは先端に近いところにあるので問題ないが、他の二つには時に少し問題がある。見かけが少し悪くなってもリングのデザインを変えた方が実用的である。見た目以外にもう一つ間違い易い理由として、カメラを自然に構えたとき、焦点距離の変換リングに指が行き、これを回してしまいがちになる事が指摘できる。ピントレバー式なら今の配置が良いが、そうでないこのレンズではより動かし易い位置にビントリングを置くべきであろう。そして頻繁に変えない変換リングをレンズの根本に置くことが合理的であろう。これには慣れの問題以外にも理由がある。焦点距離の変換リングは、ズームでないので中間位置が使えないことは言うまでもないことだが、もし少し動かしてしまい、ずれたらどうなるかというと、実験的にはピントの位置がずれる事が分かっている(勿論距離計がずれるのではない)。つまり間違いやすい位置にリングを置くことにより、アウトフォーカスのリスクを負うことになりかねないと言うことである。一眼レフと異なりピントのずれが画面で確認できないRF機では致命的な事となる。また私のレンズだけかも知れないが変換リングのクリックは50.28はきちんと止まるが35は二段階に止まる。分かりにくい表現だが、回すと完全に止まる位置の少し前でいったん少し重くなるのである。焦点距離の位置も左から35−50−28となっており、これは28−35−50となる方が使いやすいだろう。これがライカの標準レンズを中心とした考え方の表れなのか、それとも切り替えのメカニズム的な制約によるものかは不明である。その後、私の上記の指摘の要改良点がほぼ解決された新型になった・・・誰しも考えることは同じなのであろう。しかし新型を実際に触ってみると必ずしも良くなったと言うほどではなかった。レンズの使い勝手は難しいものである。

次にファィンダーを覗いて見る。やはりレンズ前部が大きく視界に入り、50mmはともかく28.35mmでは右側が大きくケラレるのは不便である。3焦点の便利さの代償は実質的にはこれだと思う。つまり上記操作上の問題点は「慣れ」による解決も可能だが、レンジファインダーにつきまとうこの問題は(大きなレンズはファインダー視野を損なう)解決不能である。その意味ではライカの他の多焦点レンズの開発に対する否定的な見解は妥当だということだろう。使う側は勝手なもので、技術的な困難さをいともあっさりと要求してしまう。私はファインダー視野の問題を犠牲にしても多焦点レンズ(特に35−75)を太さはともかく長さを極限まで短くして開発して欲しいと望む。ほとんどの局面では単焦点で問題ないが、フィールドでは時として操作性や性能を犠牲にしてもレンズ交換のリスクを回避したい事がある。誰でも経験があるだろうがレンズ交換時に危険を感じる(たとえば雨の中で濡れながらの交換。岩場などの不安定な場所での交換=私はすんでの事で川にレンズを落としそうになった事がある)こともある。過去一眼レフの時代に高価な高性能ズームを主として使っていたのも同じ理屈である。その合目的性故ライカを選び、ライカの欠点(レンズの事以外にもフィルム交換の事もある)もまたそれに付随してきたと言うのが本当のところである。国産各メーカーはたぶんライカブームが続いている限りにおいては多々あるライカの欠点も克服するであろう。フィルム交換の煩雑さ(私は失敗したことはないが、時間はヘキサーやTX−1の3倍以上かかり、フィルムを落とすなど他のリスクを考えるとライカの頑なさは?である)は完全に改善された。ライカに否定的な意見が今回は多いが、それでもトリエルマーは犠牲をもって余りある革命的なレンズと言えよう。私も重宝している。これに90mmや21mmを持ってフィールドワークに出ることもある。2本でほぼ撮れるのはやはり便利である。願わくばライカも国産各メーカーも2焦点でいいから今一度開発して欲しいものである。

次に描写について語ろう。全体にコントラストはたいへん高く、周辺光量の低下も目立たない。各焦点距離による差もない。色調も以前のライカレンズに多く見られた黄色味もなく、むしろあっさりとした冷調と感じる。実は以前は温調の色再現が好みだったのだが、最近はむしろ冷調のやや露光オーバー気味の軽い色味に魅力を感じている。ここまではスライドを普通に見た範囲での印象である。もう少しミクロにルーペの世界で眺めると、この種のパイオニア的なレンズにありがちの問題点が見えてくる。一見は高コントラスト故のシャープ感はあるのだが解像力はやや低く、一世代前のレンズと同等である。最新の単焦点レンズはどれも高コントラスト、高解像力を誇っており、悪い条件ではコントラスト、良い条件では解像力が効いて、どんな条件でも良好な結果を出せるのに比べると多少物足りない。つまり好条件下での結果が思うように伸びないのである。コントラストが高いためにハイライトが飛んだり、シャドーが潰れたりというのは止むおえないとしてもキメの細かい描写が望めないのである。どうしてもコントラスト優先の線の太い味になってしまう。勿論、文章で書くほどの程の決定的な差ではないので、普通に使う分には問題のないレベルとも言える。私の好みの部分は差し引いて読んで貰うと良いが、例えて荒っぽく言うと50mmは結構良くて現行エルマー50と、35mmは少し落ちて7枚玉の旧ズミクロン35と、28mmはエルマリート28mm3rdレンズと同等と思われる。内面反射によるゴースト・フレアや色カブリなどは格段に良くなっており(ただし効果的なフードがないこともあり、逆光時、結構派手なフレアが出ることがある)上記の例えはあくまで良い条件での撮影結果を総合的に見たシャープさと言う基準である。非球面の効果は絶大で上記の結果はf8を基準で見たときの話であって、それより絞りを開けると結果は異なり、現行品よりは多少落ちるものの、そのひとつ前の球面レンズ群に勝る性能を発揮する。歪曲が気になるという意見もあるが、このレンズの特性である「簡単に3焦点」をという野外でのスナップのような使い方だと全然気にならないだろう。

総論をまとめると、50.35mm(28mmは少し落ちるが、私の持っているエルマリート28の1988モデルもリコーGR28、ロッコールG28に比べると良くない・・・28mmは中心部の画質低下を覚悟の上で少し絞って画面全体の平面性を優先した方が良いだろう)は現行のレンズより多少は落ちるものの、その差は僅かであり、少し前のレンズとほぼ同等、しかし絞りの開いた状態ならそれら古いレンズより良く、実用的な画質と言う点ではその3焦点の機能を別としても充分である。しかも焦点距離を変えても、絞りを変えてもミクロ的ではない見方で見ると、ほぼ変化のない素直な癖のない描写と言え、目的を限ればむしろ推奨して良いレンズと言えよう。このようなレンズを開発したライカに賛辞を贈りたい。と同時に何度も記すが、他メーカーにも同種のレンズの開発を期待したい。

*追補 : 1 2000年終わりにトリエルマーのモデルチェンジ版と交代することになった。新しいタイプはピント合わせがリングからレバー式になったことと(使用者の希望が大きかったのだろう)、口径を55−49に小さくしてファインダー画面のケラレを小さくした(逆に実画面では薄型フィルターでないとケラレる)、深度目盛を3焦点分付けた(これはいささか煩雑)。少し格好は悪くなったが機能的には使いやすくなったのだろう。ただしこのレンズは長いのでピント合わせはリング式でも良かったのではないかと考えている。むしろターレットの幅やデザインを変えた方が良かったと思う。別に負け惜しみではないが旧型の方が好みである。しかしこれらとは別に3焦点の切り替えリングのクリックが確実になったことは機能として歓迎できる。旧ではやや節度に欠けていて確実性に疑問があったことは事実である。

*追補 2 実際に友人の新型に触れてみたが(2002/10)焦点切り替えのタッチは完全に滑らかになったとは言えないことが分かった。構造的に無理なのだろう・・・もちろん動きが良くなり、ストップも確実性が増した。ボディとのインターフェイスは相変わらずで、フレームの自動切り替えはボディによりスムーズさに個体差が大きい(これも技術的限界があるのだろう)。大きさは確実に小型化し、ライカボディによく似合うようになってきた。ピントリングとピントレバーの使いやすさの差は一概には言えない。小型ならレバー、大型ならリングとは言えるのだが、この大きさだとそれ程の差ではない・・・私は手前ミソではなく旧型の方が好きである。

新旧トリエルマー。これだけで見るとひとまわり小型化しただけのようだが、使ってみると格段にコンパクトな感じがする。「機能は進化、コストはダウン」と言うのが実感である。たぶん性能の向上もあるのだろう・・・コーティングと内面反射防止塗装が少し変わった。小型化と簡便化は見てのとおりである・・・いつものライカの姿勢と言えようか。小型化によりフィルター径は55−49mmとなり、薄型フィルターでないと28mm時に周辺がケラれる。ライカ純正専用フィルターなら確実だが、1万円以上するので国産品の薄型フィルターで試してみると良い(テストの結果、国産薄型フィルターで問題なし)。

香住にて。M6TTL/0.58+トリエルマー35mm+RA、F5.6にて撮影。この映像では分からないが、開放からF5.6までの描写は並のズームレンズとは比較にならない、まさに「革命的」なものである。シャープなのは勿論、周辺に至ってもコマや流れは見られず、かすかなハロを描いて、不思議に柔らかな味を醸しだす。「民俗・地理学のフィールドから」の他の写真も参照して欲しい。ほとんど開放である。このレンズは少し暗いが、逆に晴天時、開放付近をM6で使うときには便利と考えられる。スローシャッターに自信のある人には万能に近いレンズである。上記の評価に矛盾があるような言い方だったが、条件の悪い場所で、その真価を発見したのは運が良かった。現代のレンズといえど、ツボにはまる撮り方というのは残っているのだろう。私はフィールドで最も使うレンズの1本である。なぜかフィールドワークでは最もライカらしくないライカレンズを多用している(そしてノンライカレンズも)。ライカの代表的なレンズではズミクロン35/7枚玉とエルマリート90/1stぐらいだろうか?

M4-Pに取りつけた。やや動きは固いが、私の所有の中ではこのカメラがフレームの切り替えが一番スパッと決まる。ボディによってフレームの切り替えの節度に差があり、実用上の差し支えと言うほどではないが、フレームの出方にとどこおりがでる場合がある。つまり切り替えてもその前のフレームが残ることがあり、セレクターレバーを動かすとようやく正しいフレームになると言う性質の問題で、それが時により(あるいは個体により)程度が異なるのである。2001年には新型になった。旧タイプは製造期間が短かったので、20年後には値打ちが出るかも知れない。

*追補:3 新型のレンズは逆光時、旧に比べてフレアが出やすいようだ。友人の新レンズと比較したところ(厳密なテストではない)確かにそのような傾向があった。レンズ内部の黒マット塗装に違いがあり、その差があるのかコーティングの変化なのか不明・・・しかし購入には旧型中古を勧めたい。

そのTri-Elmarが友人のコレクションからやって来た。またじっくりテストしてみたい。

参考文献

「アサヒカメラ」 2000/1-ライカ社に聞く100の質問-
毎日ムック「1999-2000カメラこだわり読本」 毎日新聞社
(このテストデータを引用したわけではないが、ほぼ私のテストの結果と同じ内容である)

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