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 ライカ M6

今一番いいライカ

M6TTLの登場で「中古」になってしまったが、今一番勧められるライカがM6である。今回は私の評価を述べてみる。写真のM6はM6TTLが発表されたあと、その諸元を見て(少し大型になって、私にとって不必要な機能が−すなわち壊れる部分が増えた−付いていたからである・・・ライカの電気系統は信頼性に欠ける)慌てて買った(1998/12)最終のM6である。それまでにシルバーモデル(1998/1)を持っていたが、あまりに派手で被写体となるべき人達に(特にカメラに詳しい、または関心を持っている人=これが実に多い)気付かれてしまうのである。民俗調査では写真は決して中心ではなく、不可欠だが従たる存在で目立ってはいけない。自然な生活や仕事の景色が必要なのである。であるので20m先からでも分かるM6の光沢のあるシルバーと赤いエンブレムは具合が悪く、当然ニコンF4〜5、キャノンF−1+モーター等も好ましくはない。インフォメーションのページにも書いたが、1998/5滋賀県堅田での春祭りの取材に行ったとき、神事の終わった宮司さんがいきなりこちらに近づいてきて、ライカについての話を始めたのには当惑した。写真やカメラの仲間とそのような話をするのは好きだが、フィールドでは私はいつも「旅の人」でなければならず、当地の人々は日常の生活を続けていて貰わないといけないのである。いささか学術の世界に脱線しかけたので、話を戻そう。詳しい話は現行機種でもあり、各種のライカ本で読んで貰うとして、ここでは使い勝手・印象の問題に絞ってみよう。
まず外観から。悪くない。シルバーでは輝きが過ぎてフォルムの良さが損なわれていたが、黒くなるとM3−M4系のスタイルが浮かび上がってくる。全体に直線を基調としつつ、両サイドの曲線が手になじむ。M3などと比べて、デザイン的に批判を受けているが、私は工業デザインとしての洗練を感じる。ファインダー窓周辺の突出部がなくなり、ボディ本体と窓がつらいちとなって掃除がし易く、かつ何かに当たっても滑って力が逃げやすい。見た目も重さがなくなり(好みの問題とは言えM3はデコラティブに過ぎると感じる。勿論1954年当時はモダンだったろうが)軍艦部が亜鉛合金のダイキャストになって角の線がシャープになったことも相まって、現代的デザインになんとか衣替えしたと見ている。他に例をあげるとファインダー下部のハレをなくし、露出計用の発光ダイオードの見えを良くするための銀色の反射コーテイングも見た目のシャープさを演出する(M6TTLでは上下にこれがあり機能的にはともかくとして見た目はピカピカして野暮になった−とは言ってもいつか解説するときには評価が良くなるだろうが・・・カメラは進化する)。そして例のLeicaの赤バッジ。M4−Pより仕上げも良く、色も改変されて好感を持っている。ステイタスシンボルとしてよりもデザイン要素として優秀である。筆記体のLeica(初期モデルではLeitz)はCIの典型といえ、最近はコンパクトカメラのC−1にも大きく描かれた。M6の時代は大きく描くのではなく、エンブレムに凝縮するという考え方になっていたのであろう。シルバーボディには多少不釣り合いな赤バッジだが、ブラックボディには良いワンポイントになっている。ここまではデザイン上の問題だが事はそれだけにとどまらない。このバッジの裏には距離計像の上下のズレを調整するネジがあるのだが、M4−Pまでのモデルではこの部分にネジがあり、それを外すと調整用のネジが奥にあるという仕掛けとなっていた。そのためバッジになって特殊工具を使ってこれを外すか、トップカバー全体を外して調整するかせねばならなくなり、技術者にとっては面倒な事となった。少なくとも素人でも以前は調整可能だったことを思うと残念である。この変更の理由は技術者をして「コストダウン」と言わしめ、私から見ると「デザイン優先」と思われるがどうだろう?使っている分には「好み」と片づけられるが、メカニズムの合理性という意味では考え物である。使っているうちに距離計の調整は必ず必要になるので、ここは古いタイプを支持しよう。さて更に向かって左側のLEICA M6のロゴは黒地に白字のコントラストが美しい。勿論良い部分ばかりではない。ボディ上面のノッペラボウの部分が間が抜けている。M6初期型のERNST LEITZ WETZLAR のロゴは良かったと思う。それまでのライカに見られた大型のロゴと比べ現代的である。私個人としてはカメラと共にM5のロゴが好きだが・・・。黒ボディはそれ程でもないが、シルバーはノッペラボウの平面が目立ちどうも好まないので、友達に頼んで旧タイプのロゴを本物そっくりに透明のシールに作ってもらい貼ってみた。しかしばかばかしいので止めた。どうにかならないのかと思う。デコラティブ(装飾的)にならないように・・・M4までの軍艦部の彫りは少々装飾過多と感じる。仕上げのブラッククロームも上品である。希少性からペイントが良いと言う人も多いが、私はそうだけとは思わない。どちらも特徴があり好きである。先日M6TTLブラックのペイント限定版を触ってみたが、漆塗りのようで実に美しい。しかしこれが傷だらけになることを思うと使う気がしない。綺麗すぎるのである。ブラッククローム(俗に言う黒メッキ)はやはり丈夫である。つや消しなので落ち着きがあるように思う。だがライカの黒メッキはペイントと同じく、国産と比べ耐久性に欠けるようだ。私は大切に取り扱うので目立つ傷はないのだが、角かどの部分のメッキが薄くなり下地の亜鉛合金の銀色が出てきている(たった1.5年、撮影本数30−40本で!私はほとんどライカMでしか撮らないが、17台もあるため一台あたり沢山は撮らない)。私個人の好みとしては、なんとなく味があるのは認めるし、好ましいとすら思うが工業製品としては誉められない。同様に古いMライカのクロームメッキも美しいが、反面軟らかく、強度の点で国産の上質のものより劣っていた。M6のレンズ脱着ボタンの中心の赤塗装は更に弱く、2−3ヶ月で剥離した。あとはバルカナイトのシボは過去のモデルよりややソフトになり、持ち心地は改良されたと思う。露出計の設定は以前からあったフィルムインジケーターにその機能を持たせ、合理的で使いやすい。この点はM5より良好と言えよう。長い話になったが、外見から見る評価はこの程度である。
次に操作性に移ろう。底蓋を取り外し、フィルムを装填する。全くM4と同じである。進化しているとは思えない。しかし皆が言うほどは装填しにくいとは感じられない。確かにヘキサーRFと比べると3倍以上の手間がかかるが、コマーシャルや報道をしていない私にとっては時間はそれ程気にならない。しかし悪い状況下ではリスクを伴うことも事実で、ぜひとも改良する必要があるだろう。巻き上げ関係ではワインダーとのカプラーがあり(ワインダーは実用性に欠けるため持っていない)、これを利用して懐かしいライカビットの復刻品がカナダの TomAbrahamsson Rapidwinder www.rapidwinder.com,TTAbrahams@aol.com から販売されている。仕上げは少し安造りだが、機能的には本家ライカビットと変わらない。ブラックとシルバー(M6・M4-2・M4-P用)、更にM2用(M1・MDにも可)がある。

これはM6TTLに着けてあるカナダ製ビット。レンズはキヤノン35mmF3.2である。最近チタンカラーも出たようで、白・黒とも値段は上がったが新品を買える。ファインダー採光窓の青テープに注目=簡単だがハレ防止に効果はある。

写真のM6TTLに取り付けてあるもので、少なくともブラックはM6の仕上げと多少の差はあるものの違和感はない。ただしボディとのマッチングに差があり、通販での購入は勧められない。自分のカメラを持っていき、合わせてから買おう。国産と異なり精度に問題があるのである。勿論ビット側だけでなくボディ側にもバラツキがある。値段は3.5−4万円(どうしたものか最近値段が一万円ほど上がった)と言うところで妥当な値となっている。ライカビットが10−15万円(しかも相当古い)と比べると勧められる品物だろう。取り付けは簡単で純正のベースプレートからフィルムの巻き取りスプール押さえの羽を外し、ラピッドワインダーに取り付けるだけで完了。あとは普通に扱えば良い。ただし多くを期待してはいけない。ライカビットが短命で数も少ない事をみても解るように役にはあまり立たない。底のトリガーレバーを引き出し、フィルム巻き上げを左手の直線運動で素早く巻くと言うのが能書きとなるが、バルナック時代ならともかくとして、Mライカのレバー巻き上げは充分早く確実なので差が出ない。普通の使用条件なら、大きく重くなるデメリットの方が大きいだろう。私が装着しているのはライカしか使わないためどうしても連続して、かつ安定して撮る時のためである(新ワインダーはコンパクトになって悪くないように見えるが、動作時に相当の振動/動作音があり好まない)。固定した視点で連続して撮るときには、右手でのレバー巻き上げの回転運動が入るより安定する。右手でカメラ保持とシャッター操作のみ行い、左手の掌と親指でボディを挟み、人差し指でピント合わせをし、他の3本の指で引くようにして巻き上げる。速くはないが安定する事は間違いがない。要するにフィルムを巻くとボディが動き、無意識なので普段は感じないが構え直し、またシャッターを切ることになる。一度空シャッターで試してみると良い。案外動揺があるのが解る。そして慣性質量が増すのでブレにくくなるのも当然である。更に一般化して言えばモータードライブとワインダーは似ているが本質は全く異なる。モータードライブは重く大きくなっても、速く撮ることが機能として優先されるのに対し、ワインダーは巻き上げの合理化が目的である。トプコンスーパーDMにワインダー(これが国産最初の実用化されたワインダー)が付いて、最も恩恵を受けたのは右手が安定し、結果としてボディの保持が安定し、スタティックなバランスで撮影が可能になったということで、当時一部に手巻きとスピードが変わらないと言った意見があつたが、それは本質を外した批判である。その後ワインダーは小型軽量化し、ついに内蔵が普通になった。シャッターボタンも電子化し、スイッチのようになった。AFもそうである。あるいは標準化されたパームグリップもそうである。各々の機能に目が行きがちになるが、結果として、あるいは計算されたこととして付加された重要な機能としてカメラを保持し、ほんの少しの動きで作動させる仕組みがあるのである。名人でなくても迅速に確実に写真が撮れるようになったのである。私もヘキサーRFの機能のうち最もM6と比べて優れている点はフィルム給送の自動化と感じている。
話が大きく展開したが、ビットの効果は特定の人には価値があり(ビゾと同じで、大部分の人は目的と一致する今の一眼レフを使うべきだろう)、それはライカのボディ、レンズの形状、機能と一体となってのみ利用価値があるということである。これを装着していても通常のレバー巻き上げも可能なので併用となる。
さて、M6本体の解説に戻そう。フィルム装填は巻き取りスプールにフィルムを挟み、蓋を閉めて2カット巻けば完了となっているが、そう簡単ではない。空巻きやパーフォレーションの損傷があり得る。やはりフィルムをスプールに差し込み、バックドア側からフィルムを少し動かし、フィルムの送りギアをパーフォレーションに確実に噛ませ、蓋を閉めてゆっくりと巻き上げ、巻き取りクランクが回転しているのを確認して2カットの空写しをして完了としたい。シャッターを切る。特に言うべき事はない。巻き上げ、シャッターともに良く調整されたM3.M2に比べ、音や操作感に滑らかさが足りないのは各種の評論にもあるとおり事実である。しかし特段に撮影上の支障になることはない。コストダウンが計られていることは事実としても、その反面、材料学的な技術の改良もなされており、信頼性と言う点ではM6を支持する。仕事で使うにはM3はあまりに古すぎる。私も何度も買おうかと思ったが断念し続けているのも(この後M3初期型を入手した)そのせいである。コレクションと割り切ることはどうしてもできない。前にも書いたとおり「Mライカの粋はM5にあり」だが、これも古すぎる。これから使うために購入を考えている人にはM6である。未だ評価の定まっていないM6TTLも含めても良い。ライカからもM6の別の改良モデルの開発も正式ではないがアナウンスされている。それも含めよう。ヘキサーRFも当然含まれる。まずはライカの世界へ来て欲しいと思う。
次に露出はシャッター優先のTTLスポット(セレクティブ)測光で、これも巷で評判が悪いが、どこが悪いのか理解できない。三角形の赤い発光ダイオードが二つあり、絞りの操作で両方が同じ明るさで点灯したときが露出の合った時である。少しのズレで左右のダイオードの明るさが変わり、微妙な動きに感心する。M5とはシステムが異なるが、やはり測光範囲は狭く、神経質な動きとなる。初心者には難しいかも知れないが、それは現在の一眼レフの完成に近づいた測光システムと比べた場合のことで、外部露出計で測るよりは大進歩である。それに反射率(勿論、対物の)や測光範囲(焦点距離によって対ファインダーで変化する)のことを頭に置けば正確なメーターである。ヘキサーRFやベッサRの中央部重点測光より良いぐらいである。適正な露出の決定は永遠のテーマであり、限りない曖昧さを内包している。「ピントぴったり、マシンは真っ直ぐ」はすぐに達成されるのだが・・・。
次に最も重要なファインダーに進もう。ファインダーを覗く。クリアでシャープ、他のRF機の追随を許さない。M3のファインダーを賛美する声が大きいが、それは半分認めるとしても、倍率の大きい分見やすいと云う点は、ワイド側のことを考えれば今の0.72倍で良いのではないか、譲歩しても0.85で充分であろう。問題は全体的な見えの事ではなく、距離計窓の逆光時のハレと各焦点距離のフレームの不正確さであろう。後者はパララックス同様RF機の宿命的なことで、遠距離の撮影時フレームよりかなり多く写り込む。遠距離でシビアに調整すると近距離時フレームより小さく写ってしまう。被写体が欠けるより広めに写る方がましだと言うことだろう。一眼レフではないので経験に学ぶほかあるまい。前者は私にも実用上の大問題であった。フィールドでは距離計窓がハレてピント合わせ不能の事態が度々起こるのである。そこで実験。まず距離計窓に迷光が入って悪影響が出るのかと思い、ハレ切りをしてみる・・・関係ない。採光用の窓を疑い覆ってみる。ハレはない。しかし当然のこととしてフレームも出ない。これは困った。ブライトフレームの採光用の窓でハレるのである。ライカの美点が問題点になっているのである。矛盾である。次にブライトフレームが多少暗くなってもハレを小さくしようと窓に半透明の(ストロボに付けるトレーシングペーパーのように光を散光にしてみる)テープを貼ってみる。少し効果がある。しかし決定的とは言えない。更に部分的な問題と考え、小さな不透明のテープを貼ってみる。効果は絶大である。80%の効果があった。大きさや位置を変えて実験を繰り返す。写真のとおり採光窓の向かって中心からほんの少し右上の位置が最良である。フレームに影響を小さく、距離計窓に効果的に遮光するのである。青い色は関係ない。何でも良い。ただし全く光を通さない黒テープよりは少し光を通すテープの方が結果がよい。というわけで私のファインダーのハレはほとんど出ず、フレームは良く見え、それは薄く青色に光っている。勿論、ファインダー自体に着色が出ているわけではない。フレームだけである。この話はどの本にも載っていない改善策なので活用されたい。なお老婆心ながら多くのテープの糊は質が悪く、経年変化で溶けだし、採光窓がベタベタになる。まずデザイン・製図などで使うメンデイングテープにビニールテープを貼り、適当な大きさに切ってそれを貼るのである。接着力が小さく、すぐずれるが戻せばよい。無くしても問題ない。とにかく安価なのである。このハレの問題はM6のファインダー全体の悪さと、よく書かれているがそれはちがう。確かにM3のみならずM5やCLでもハレにくいのは事実である。しかしこんな事があった。M5の中古ボディを買おうと思って品定めをしていた時のこと、一台程度の良いものがあった。点検すると28mm.75mmのフレームの入ったM6のファインダーに改造したものだった。純正改造で値打ちを感じた。それまでもう一台のM5を最高のMライカと考えていたが、28mmが使えない(今はフルフレームを28mmとして撮っているが)ので実際にはM6中心に撮影していたのである。そこで実験。!やはり距離計窓がハレる。同じ条件でノーマルでは全く問題はない。改造はフレーム切り替えの板だけなので、ここで偶然にもその部品の不具合でハレがでることが解った次第である。ではどうしてそうなったのか?残念ながらそれは全く解らない。不具合のまま14年も作り続けたこと(私は2台しか持っていないので全ての時期のM6が同じとは断定できないが)も理解できない。M5の生産を止めた後、実用機でなくなった証とも考えられよう。M4−P(多少良い)やM6TTL(M6と同じ)ではどうなっているのだろう。
ともあれファインダーは実用的で「肉眼より美しい」のは本当だろう。倍率も今のまま(0.72−0.85倍)でベストと言えよう。ヘキサーRFの倍率では28mm以外は見にくく、0.85より大きいと35mmすらファインダーに入らず問題である。私もいずれM6TTLの0.85のブラックボディを購入しよう(この後購入)。いつも言うように新品を買わないとライカ社は儲からず、生産を止めかねないのである。たかが私一人がというのは当たらない。M6は月1200-1300台しか生産しておらず、昨今はそれすら在庫がだぶつき加減なのである。国産の高級機なら一桁上の生産台数だが、ライカに関しては個人的な購入の努力が響くのである。よく考えてみよう。

総論として、これからライカを始める人にはM6(まだ新品・新品同様のものが手に入る)または派生モデルのM6TTLを勧める。勿論ブラックボディだが、これは100歩譲って、派手なシルバー/チタンでも可としよう。レンズは国産のレンズで充分と言える。ライカのレンズは古い物は癖があり勧めにくいのと、新品はやはり相対的に高すぎる。28mm-35mm-50mm-75mm-90mmのうちから2−3本あれば良い。ある人に購入のアドバイスを頼まれているので例を示すとM6TTLB0.85+カラースコパー35mmP+カラーヘリアー75mmとなる。この人は古いズマリット50mmを持っているのでそれも生かせる。少し余裕のある人は少し高くつくがヘキサノンKMの28mm.50mm.90mmの3本セットでも良い。ボディよりレンズの評価が高い面もあるのである。私も持っているが想像よりかなり良く、逆光性能ではエルマリット28mmを一段凌いでいる。90mmはエルマリット90mmと同等と言えよう。ある雑誌で「ライカレンズは国産と変わらないが同じではない」...ではどうちがう?「気分が違う」というくだりがあった。本当は違うが、良いか悪いかの価値判断では語れない多くの要素があり、上記のような乱暴な話では割り切れないのがライカレンズであると今はしておこう。ライカにこだわる人は、文句なく良いズミクロン50mmを中心に国産レンズを組み合わせるのが良い。現行品の国産レンズ(限定品を含む)はどれをとっても一級品で安心して使える。国産・舶来の中古でも良いが選択が難しく、初めて使う人には不向きである。3本(広角、標準、望遠)とも最初からライカで揃えるのも賛成しかねる。使いきれずに死蔵している人も多いのである。またヘキサーRFは便利だが、初心者が使うとライカの本質に触れる前に慣れてしまい、高級コンパクトカメラと同次元でしか扱えなくなる。それでも良いが、それならコンタックスG2にすべきだろう。ヘキサーRFの最大のメリットは膨大なライカの遺産を手軽に引き継げることなのだから・・・。そして今はライカが史上最も安い時代である。円の強さと、欲しい人にほぼ行き渡ったと言うことと、ヘキサーRFをはじめ国産の魅力のある機械がでつつあることとも関係あるだろう。税込みで19万円前後である。まだ下がると筆者は見ているが、どうか(その後15万円まで下がり、円が弱含んだだめ少し上がっている−2001.4 18万)?
M6に慣れたあと、覚悟が決まったら最低フレームの内蔵されている6本(例を提示すると、1.ヘキサノン28mm−ヘキサノン35mm-ヘキサノン50mm-カラーヘリアー75mm-ヘキサノン90mm 2.リコーGR28mm-ズミクロン35mmASPH-ズミクロン50mm-カラーヘリアー75mm-エルマリート90mm−どちらにしても135mmはやや実用性に問題があるので、無難なところテレエルマー135mmあたりで上等。この例には一部中古品も含むが、選択の基準は描写の性質を考慮した)は揃えねばならない。逆に言えば六つのフレームでしか構築できないレンズの世界が拓けるとも言えよう。

M6にズマロン35mmF3.5Lを取り付けてみた。シルバーと合わせると、思ったより軽快な雰囲気となって悪くない。どんな心境の変化か今までほとんど使わなかったシルバーを最近はよく使う。のっぺりとしたボディ上面も単純な景色で悪くないように感じている。同時にM6のファインダーの「ハレ」も気にならなくなってきた。どうも曖昧さと現実との間の世界へ踏み込みつつあるようだ・・・2001.4.29。

*追補1  私の信頼する修理屋さんに教えてもらった。M6のメカの弱点はシャッターにあり、テンションがなくなる事があるとの話。一度狂うと調整しても、狂いが再発し易い。どうやら中身の部品の強度/精度に難があるのだろう。とは言ってもM3−2−4でも古すぎてシャッター幕が外れることは結構あるという事である。概してメカの専門家にはM6系は評判が悪いようである。

*追補2  M6TTLに0.58が出て1年が経った。ヘキサーRFの距離計システムに少し疑問を感じて、ついに0.58を購入した。やはりライカの魅力は「性能」より、強度/精度あるいはRF機のノウハウと云うようなものなのだろうと達観のこの頃である(2001/10)「丈夫で長持ち」。

*追補3  読者からファインダーのハレ対策の件で情報が寄せられた。いずれ行き渡るだろうが、今はまだ一般化していないようだ。下記の通り(原文を少し編集した)。

「さて今回メールしましたのは、ファインダーのハレに関する情報です。 ライカ本社にM7のファインダーをMPと同等にする改造は既に始まっているのか、また改造費は幾らなのか?と質問すると、シーベルから返事が来 ました。
M6/M6TTL/対策前M7のすべてが現在\35,000で改造できるそうです。
ただしこの改造は日本では正式にスタートしていない(正式価格も未定、部品供給の問題等で)ので、シーベルに直接持ち込まれるか郵送のみの対応だそうで す(販売店経由は今のところ一切認めていないのは確実)。
正式価格も未定ということで、今後正式に始まると高くなるのではと思い、本日改造に出してきました。納期は2〜3日ということで、意外に素早い対応に驚きました。後日また改造後の報告をさせていただきます」

シーベルの回答の抜粋
「・・・この改造に関しましては、今日現在、オフィシャルに案内しておりません。理由は価格の設定、部品の供給等の問題があるからです。従いましてこの改造に関しましては、御手数お掛けしますが弊社へ直接送付もしくは直接お持ち頂いての受付けに限らさせて頂いております。M7/M6/M6TTL 全て同一料金とさせて頂いております・・・」

***また上記の方から連絡があり、改造の結果ファインダーは見やすくなったとのこと、おそらくMPと同じ仕様になるのだろう。M6/M6TTL/M7と範囲・年代が広いため、そして実用的なライカボディであるため、改造が比較的安価(そして純正改造)だということはありがたいことである。

*トップの写真はM6改(外側だけでなく内側も調整されている)+沈胴されたエルマー50mmF2.8、それなりに格好いい。M6のデザインは大好きである。

キヤノン・セレナー35mmF3.5を取りつける。これくらい薄いのが使いやすいのだが...私の思惑とはかけ離れてレンズは大型化の方向である。

M6にエルマリート28mmF2.8/4th。少し不便もあるが、0.72ファインダーにも28mmレンズは使える。少なくとも私はあまり気にしない=それというのもフレーミングは「だいたい」で、あとで周辺を切り捨てることが多いためだ。ノートリミング派の人には疑問だろうが、どちらにしても視野率はあまり高くないし、微妙にフレームが傾いている個体も存在する(国産では考えられない・・・高価だから精密とは考えない方が良いだろう)。

これは summilux35mmF1.4(球面)である。少し様になっているだろ?

なぜか画像では白ボディが多いが、最近は「白は派手で嫌だ」という使い始めた頃の考えと違って、むしろ白い方がライカらしくていいんじゃないかと思い直し、圧倒的に黒より出動機会が増えている。

これは elmarit28mmF2.8/3rd ...普段は冷静に「私の大切な道具」として語ってはいるが、「ライカはカッコイイ」と私だって思う。

エルマー90mmF4沈胴を取りつけた姿...ずいぶん奇妙なスタイルだが昔の作家の写真を見ると、ボディがM6ではなく、M3/2に変わるだけでこれとほぼ同じだ。このレンズは逆光に弱いのでフードは必要だろう。全然「コンパクト」ではなく、機構的に複雑になった。良き時代のライカである。

ごく最近(2005.11)、1994年に限定で500台作られた「M6トラベラーセット」の綺麗なモノを入手した(もちろん限定品はたいてい新品同様だ)。あまり知られていないが最近流行りの記念モデルとは違う。ノーマルと異なるのはボディの貼り革がバックドアも含めて子牛の革だということと、巻き戻しクランクがパンダになっていることぐらいで、レンズはズミルックス50mmの前の型のシルバークロームメッキタイプ(ノーマルは黒メッキのみ)で、専用のケースとトランクが付属していることである。「好み」を排除すると、やはりMライカでの最ロングランモデルである「M6」が最もいいLeicaのように思われてくる。

トラベラーズM6にキヤノン28mmF2.8を取りつけた。なかなかスタイリッシュだ...ストラップも人気のA&Aのベージュにして、当分の間M6の主力として使いたい。これには黒色もあって、色だけではなく少し質にも差があるが、どちらも使用感/質感はいいと思う(価格は\5040)。

M6にニューカマー来たり。1995年のチタンボディだ。私の唯一持っているチタンカラーのレンズ、ツアイスビオゴンG28mmF2.8L改を取りつけた。しかしLeicaのチタンカラーは鈍い表面仕上げで、このレンズに限らず一般的なチタンカラーの輝きとは異質だ。店で聞くと「ボディとレンズの色が合わない」と言って敬遠する人が多いようだ。このボディも結局未使用品のまま私のところへやって来た。ノーマルボディとはチタンコーティング(真鍮地)と貼り革がオーストリッチ仕上げのところが違い、シャッターダイアルの文字が白く、巻き戻しクランクのつまみ部だけが黒いことがあげられる。色よりも何も上のトラベラーと同じに革で被われていることが良い感触を手に伝えている。やはり大事に使いたい。チタンの画像処理は難しく、本当の色はもう少し銀色に近い。

M6の初期型(1986年)がようやく(長かった)やってきた。初期のM6は不具合(メーター関係やファインダーのバルサム切れ)があって、しかも古いので程度の良いモノが少ない。これはボディ横にプラスチックのチップが付いた「初期型の後期型」だ。外見は「ERNST LEITZ WETZLAR GMBH」のトップネームと「赤丸」のLEITZの表記だけだが、中身は露出計の感度が後期型より低いなどいくつかの違いがある...当然後期型の方が安定性は高い。

こういう景色だ。これからM6は当分これを使うだろう。

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