ズミクロン35mmF2 (7枚玉)
私のよく使うレンズ=ズミクロン35mm 今回はズミクロン35mmF2のいわゆる7枚玉を採りあげる。35mmレンズは私にとって使用頻度の最も高い焦点距離なのだが、その中でも「あれこれ云っても」一番多く使うレンズがこれなのである。あまりに有名なレンズなので初めて見る人は少ないだろうし、その評価/評論も多く出ているが、今回は私の感想…必ずしもベストの性能とは云えないが最もよく使うレンズとしての魅力を考えてみたい。 では見ていこう。シイベルの1988年版カタログデータによると、5群7枚構成(面白いことに8枚玉の最も内側の薄い凹レンズを1枚取り去った、あるいは6枚玉に1枚入れたような中間的な構成である)、最小絞りF16、距離計連動範囲∞−0.7m、最小撮影範囲430X640mm、フィルター径E39、全長26mm、最大径52mm、重量190g、コード11310(ちなみに写真によると後期型レンズである)となっており、これは新旧ほとんど変わらないデータだろう。また話が脱線するが、このカタログは1988年最後のウェツラーライカM6のもので(実はこの年のカメラショーで貰ったものである)ロゴも「Leitz」の文字が誇らしい。このあと(1988年後半)ライツの文字は正式には消えてしまった。レンズは全部で12本あり、エルマリート21/1st、エルマリート28/3rd、ズミルックス35/球面、ズミクロン35/7枚玉、ノクチルックス50、ズミルックス50/2nd、ズミクロン50/3rd、ズミルックス75、ズミクロン90/2nd、テレエルマリート90/後期、エルマリート135/眼鏡付き、テレエルマー135/前期(すべてブラッククローム仕上げ)がその内訳である。そのうちズミルックス50とテレエルマー135だけが純ドイツ製で、あとはカナダ製であることは非常に興味深い…実のところ私はカナディアンに肩入れしているのである。 さてまた話を戻そう。7枚玉の新旧の差は並べてみないと分からない程度の差異が多い。まず全体の印象は同じブラッククローム仕上げとは云っても旧に艶があり、新は完全なマット仕上げである。次に各部を順に見てみると、まずマウント基部から被写界深度環はほぼ同じである・・・レンズ交換指標の赤玉の径が少しだけ新が大きい。新はマウント基部のターレット下部の一部が平面で、そこに
LENS MADE IN GERMANY と小さく彫ってある・・・これには色づけは無い。旧はこれがレンズ前面に大きく彫ってある。そしてこれは全体に云えることだが、数字の彫り込みは新がやや太く、黄色のfeet表示の色が濃く山吹色とも云えよう。白ペイントも真っ白に近く、旧の少し黄色味がかった色とは違う。これは経年変化ではない、実は他のレンズでも似たような結果なのである。更に書体も新はいわゆるタイプライター文字で、旧の普通のゴシック文字と比べてかなり角張っている。この差はコストダウンというような性質のものではなく、視認性の向上を狙った改良だろうし、その効果はあると感じている。それに今となってはライカ特有のタイプライター文字も個性的で好ましく思う。 次にフードだが、標準では角形のバヨネット式プラスチックフード「12524」が付いておりコンパクトで効果も充分で好ましい。フードキャップ「14043」は便利である。これ以外に多くのフードが着くのだが、まず不思議なものがある…ズミクロン35/ASPHに付いていた「12526」は全く「12524」と同寸同仕上げなのだが番号だけ異なる…当然使用可。あとはズミルックス35/球面などに用意された「12504」がある。浅くて効果の程は疑問が残るが、形が良いのとシリーズ7フィルターが挟めて、これ一つでほとんど全ての35mmレンズをカバーできるメリットがあり薦められる(もうすぐ生産を止めるので欲しい人は買うべし)。他に50mmレンズと共用の「12585=メタル」「12538=プラスチック」などの深めのフードが装着できて、これらはコンパクトさが犠牲になる代わり効果が期待できる。更に古いE39基準のフードIROOAなども使え、これは長い歴史と基準の厳守が生んだ多様性のたまものである。 ☆読者からの質問…6枚玉に角形フードが付けられないかどうか?…結論は取付可能だがお勧めできないとなる。 写真右(7枚玉+12524)のとおり、角形フードの回り止めのためにフード側の凸とレンズ側(ここではF8の上)の凹が噛み合うようになっている。写真左のように角付6枚玉に12524を取り付けるとピッタリ収まるが(当然と云えば当然)レンズ側の凹部がないため触るとフードが回ってしまう…と云ってもサイズがピッタリでバネで締まっているので使えなくもない。しかしMレンズ用の丸形フードならどれでも6枚玉に付くので、そちらにしたほうが良さそうである…お勧めは12538かIROOAのフェイク品である。メタル製は衝撃で凹み、元に戻らないからだ…コレクションとしてなら当然IキレイなROOAそのものが良いだろう。 全体として外から見た私の「使う」要因は、コンパクトさとピントレバーや絞り環の使い勝手の良さ、これらは1958年から始まるズミクロン35mmの歴史における改良と思う。8枚玉のピントのストッパーは不便だし、丸形のスリットフードは格好良くて好きだが実用としては箱形のフードがコンパクトな割に効果が高く、フタがフードに取りつけられる、6枚玉は好きだが「角」による絞り操作はしにくいし「角なし」だと狭くて操作困難、と言うような事になり、結局7枚玉は私のフィールドでは使いやすいのだろう。 私の町の駅、近鉄新祝園駅にて。 M6+ズミクロン35/7+RA。ここではずいぶん青いが、そういう光線状態だということで、実際は許容範囲ながらやや暖色系の気持ちのいい色である。かえって青くなりすぎず良いと思う。F5.6程度でピントは全面に充分来る。 *愛すべきライカレンズとは、SA21/3.4...E28/2nd-4th...S35/2nd-3rd...S50/2nd-3rd...E90/2.8.1st...TE90/1st-2nd...H135...E135 暗号みたいだが、このあたりだろうか? 左が12524フードを取りつけた最終型ズミクロン35/7、右が最初期型。ピントレバーの形/コーティングが異なるのが分かる。トップの写真が私の3本目のクロームタイプ・ズミクロン35/7に12504フードを取りつけたもの。 *今年(2002年)新しいタイプの白黒2本を友人に譲った。同じレンズを3本も持つことに嫌けを感じ、かつ僅かの期間にレンズ価格が高騰してしまったため、儲ける気は全くないが手放すことにしたのである(私はオークションや下取りは使わない=友人・知人への譲渡が原則である…事情を話して委託販売で知らない人でも「まともな人」に店を通じて譲ることもある)。手の中には一番古い7枚玉が残った・・・これは別の友人から買ったもので、その歴史を考えると手放すわけには行かないのである。これからは「どれを使うかな?」なんて考えず、精一杯使おうと思っている。なにせ35mmレンズでは一番多用するレンズなのである・・・この本文とは異なり、現在は28mmレンズが使用の中心になってはいるが。 *恥ずかしながら、またしても「義理」で7枚玉(カナダ/1986)がやって来て、また2本に戻ってしまった(2003.2)。よくよく7枚玉に縁があるのだろう・・・それも運命と受け入れよう。 M5に。このレンズはライカMレンズ中、最も好ましい大きさ・デザインだと思っている。 今は友人の手元で活躍しているクロームモデル/これが探すとなかなかない。 2007.3/また友人から戻ってきた7枚玉・・・不思議なレンズだ。7枚玉は現在(2008.1)新旧白黒合わせて2本所有。これら以外に3本が私を通過していったこととなる。 LeicaM9に。 ついにお気に入りのレンズが復活する。私はLeicaの35mmレンズの中で最もこれを好んでいる…性能や操作性だけではない、成功した取材の記憶ともつながっているのである。これで撮った富山県黒部川の写真が忘れられない。 *参考文献 日本シイベルヘグナーの1988年版M6カタログ。 吉野川/紀ノ川を源流域から河口まで下った…毎週の旅も年度末^^/ 下市町広橋の梅林の茶店にて…茶店と言っても訪ねてくる人達に甘酒をふるまっていて、寒い(北風が吹きつけてホントに寒い=梅の写真が少ないのも「寒い」からだと今回気がついた)外から狭い店のストーブの前に座って見た枝垂れ梅が一番キレイだったかも。このあと吉野川源流域へ遡って東吉野村・丹生川上神社上社まで行った。 今回はLeicaM9+summicron35mm/7枚玉である…私のもっとも好んでいる35mmレンズだ(もちろん最も性能が良いわけではない、なにしろ30年以上前の設計なのである)。 LeicaM9で撮影。倶利伽藍峠から能登半島外浦を望む。完全逆光だと強烈なゴーストが出る(これはレンズ対太陽の方向を調整して「カッコ良く」ゴーストの出るように撮影)…フィルムと異なり「その場で」確認できる。しかしこのレンズの好きなところは、このような場合でも画質そのものの低下は少なく、写真を撮る(自分の目で見るのとは違う)ことが楽しくなるレンズなのである。 nagy |
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