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「ライカLマウントレンズ/2」 標準系 2 Lマウント 40mm-60mm

★LeicaM9購入を期して、ライカマウントレンズをデジタル時代に蘇らせる実験を開始した。随時テストしていくので参考とされたい。


1.ローライ ゾナー 40mmF2.8 C 2003  たぶん営業的に不成功だったのだろう、かなり安価で出始めた。そういう事情にて久しぶりにレンズを購入することになった。テストの結果は「かなり良好」である。変形トリプレットの古い形式のレンズ構成(往年のローライ35のものにそっくりだ=勿論それを意識して作ったリバイバルレンズとも言える)なのであまり期待していなかっただけに驚きである。コシナの意欲には敬意を表したい(風評では鏡胴のみならず中身もOEMだと聞いている)。標準はダブルガウスと勝負が決まったような昨今だけにコシナが2本出した(限定50mmF3.5/CS50mmF2.5)「非ガウス」の新レンズとこの40mmに現代の技術の粋を見る...3本の中ではゾナーが一番。ローライ・ツァイスHFTコーティングも真っ青な色がベースで他の派手な色合いが散っている。まるで「飛ぶ宝石」カワセミの羽色のように美しい。 E39

feet表示が緑色。40mmはライカマウントでは使いにくいとのことであるが、心配ご無用。CLとCLEを2台づつ、計4台の40mmフレームのボディがあるのだ...それにM3のフルファインダーがほぼ40mmの画角に相当する。鏡胴の仕上げも多くのコシナレギュラーレンズより力が入っていて感触はすこぶるいい。写りはかなり良いが、少し注意すべきは、先入観とは異なりいわゆる「昔風」ではないハイコントラスト、高彩度の切れ味重視の絵を作るのである。

保津川にて。完全逆光で撮っているが右の木の下あたりに干渉ゴーストが出ている程度で落ち着きのいい写真が得られる。ここではF11まで絞っているためにシャープ感は増しているが、開放からでも全然問題ないだろう(SRA)。

読者からの要望で(!)もう1カット...反響の大きさに少し驚いている。今までライカ系統(内外のライカマウントカメラを含む)では異端だった40mmフレームを持つカメラに少しの光明があったのだろうと思う。20−30年も前のレンズ以外にボディに対応する「最新のレンズ」がなかったのだから...大きさや使い勝手、性能共に多くのCL/CLEユーザーに満足のできるレンズである。私は今さらながらに、たとえメインカメラでなくても案外ユーザーは多いと踏んでいる。

また別の読者からの要望でレンズを覗くことにした。本当はもっと美しい...これにマゼンタ・オレンジの色がもう少しちりばめられる。私の眼鏡はおまけ。

2.ペンタックス43mmF1.9L  2002年終わりからペンタの限定レンズの安売りが始まった。いくらライカブームと言っても、安易な改造レンズでは(15万を越す価格も障害)はまったく売れなかったのだろう。私の知っている範囲では一番安い店で\38000、高くても4万と1/3以上のディスカウントであつた。性能的には定評あるレンズとは言え、鏡胴の作りに多少の問題があるようだ。後に継ぎ足した部分(エキステンションチューブのような寸胴なもの)の内面反射対策が完全ではなく、逆光時思わぬフレアが発生した。それ以外に組み立て不良のフランジの非合致があり、2本目でようやくキチンとした性能が出た。弁護すると2本目のレンズでは開放からピントはしっかりとしており、1段絞れば実用的に問題はない。フランジをかせぐために少々大きく、その焦点距離も災いして(一眼レフなら何ミリでも関係ない)決して使い易いとは言い難いが、価格を考えるとケースに1本あっていいレンズと結論できる。 2000/40.5mm 

レンズは物足りない面もあるが、ファインダーはさすがに一級品である。中に50mmと43mmのフレームが浮かんでいて、しかもやや大型であるため見やすい。あえてMライカに着けるほどの必然性はなく(フレームが合わない)ベッサTに取りつけて楽しむのがいいだろう。ベッサTにはこの他ミノルタロッコールM28mm、ニッコール105mmF2.5L、キヤノンその他の85/100mmレンズあたりのフレーム外れのレンズや、24mm以下のどっちにしても外部ファインダーの必要なレンズで撮ることが多い。だいたいがズボラ(京都弁)なので、どうしても必要な場合を除いて、RF機はフレームの出る範囲のレンズで撮ることが多いのである。

レンズとファインダー…造りはさすがにペンタックス、とても良好。テストでは最高水準まで達したLeicaレンズに比べると少し劣後する(Summicron50mmと比べることに無理があるとも言えるが…)。SIGMA DP-2mのファインダーを探していて存在を思い出した。

京都・宇治川、天ヶ瀬ダムにて。一般的なRF系統(もちろん現代の製品)のレンズより繊細な味があるように思われる。

3. スーパーロッコール45mmF2.8L c 1948−55 これは後期型なので1955年に近い製造である。ごく周辺の崩れ以外は問題なし(ただし絞っても完全には改善されない)。カラーにも対応している。梅鉢デザインはなかなか愛くるしい。「カメラ談義」収録。E34またはA36。

CLに取りつけた。デザインはあまりCLと合うとは言えないが、大きさ・焦点距離という点ではいいだろう。もっともこのレンズのデザイン(近代的なデザインとはかけ離れている)と合う現在のボディなどありはしない。

滋賀県信楽にて。色は比較的あっさりとしてるが、色相の偏りはほとんど感じられない。多少の糸巻き型の歪曲が見られる。やはり軟調に仕上がるようだ。

トリプレットの前群が3枚貼り合わせの珍しいレンズタイプである。どういうわけかミノルタはこの時期、決して補正にもコスト減にも有利でない、このレンズタイプにこだわり、50mm.85mmとほぼ同じ構成で開発した。

4.ズマール5cmF2 C 1936年 古いレンズだが、程度の良いものがあったので研究用に購入した。想像より遙かに性能が良く、順光なら戦後のズミタールと変わらない。ただしコーティングがないので逆光では難しいと云えよう。古いが本数が多いため、じっくり探すと程度の良いものが比較的安く手にはいる。E34/ドイツ/1933−1940

手前はズミタール、M3に着いているのが沈胴されたズマール=エルマー並にコンパクトである。

信楽にて。あまりこのレンズで撮っていないため作例が出しにくい。半逆光でフレアが出ていて山の麓がホンワリしている。逆光にさえ気をつければ使えなくもない(ピントそのものは悪くない=ズミタールよりも周辺はピントが来るようだ)。色味は疑問があるので彩度の低いフィルムで撮る方が良い。

Leica II c に取りつけた。やはり大きさやデザインでよく合う。

5. ズミタール50mmF2L c 1942 逆光で極端に画質が落ちる。コーティングがなく反射防止塗装に劣化があり、ゴーストよりフレアが大問題である。趣味としては良いが、作画を考えると実用の範囲外と思う。しかし知人の話だとそれ程悪いとは云えないと言う・・・個体差と経年変化があるのだろう。最近、戦後型のものを購入した。ドイツ/専用36。*

6.ズミタール5cmF2L C 1949 今度知人の勧めにより購入した。初期型と異なり、これはコーティングもきちんとあり、程度も上々。オールドレンズを見直すきっかけとしたい。以前持っていたものはコーティングもない時代のレンズで、内面反射対策の黒塗装も半分ほど剥がれていたためフレアがひどく、画質テスト以前の問題であったが、今回のレンズはオリジナルをよくとどめていて、「撮り甲斐」のあるものである。仕上げや操作感は現代のレンズとは直接的に比べられないが、重厚で好感が持てる。まだ詳しくは撮っていないので詳細は後日となるが、レンズ設計が古いことを前提としての実用性はあるとだけは記しておこう。実質的に私にとって3本目(ズマロン35.ズマリット50.ズミタール50)のライツのLレンズである。ドイツ/専用36/1939−1955。

ズミタール戦後型丸絞りタイプ。

こちらはM3に取りつけた。少し見ただけでは沈胴ズミクロンと差はない。このレンズの光学的な評価はとても難しい。距離や絞り値によって絵に違いが出たり、光の状態を選んでしまうのである。

友人に頼まれてズミタール(特殊な径)の簡易なフードを「在庫」から探した…いちばん近かったのがCanonの標準系40mmフードだった。ズミタールの外周に取り付けると少しガタがあるので薄い紙のスペーサーを挟むとなんとか安定した(これはいいアイデア=金属同士でも傷が付かない)。純正フードよりカッコいい。

7. ズマリット5cmF1.5L c 1953 逆光ではフレア、ゴースト共に派手に出る。フレアは実用の範囲内だが、ゴーストはいただけない。順光なら問題なし。多少の黄色味はあるが、条件が良ければズミルックスに負けない画質を持つ。「カメラ談義」収録。ドイツ/E41/1949−1960。

M2とズマリット。このレンズの意匠が国産の大口径標準レンズに大きな影響を与えた。今以上にエルマーやズミタールより「高級レンズ」だったのである。

左がズマリット、右がDRズミクロン初期。

重厚そのもの。デザインの系統からいえばズミクロン/1stよりもズマリットが合うのかも知れない。性能はもちろんズミクロンがいい。

8.タナー50mmF1.8  1959年頃  3群6枚構成のゾナータイプレンズ。同時代のタナー35mmと同じで仕上げは相当いい。田中光学工業が1952-59年に作ったライカコピー機(I/IIC/IIIF/IIIS/IV/SD/V3/VP=確認できた機種)の最終期に着けられたレンズである。初期の頃の明るいレンズ2.8どまりで=私の持っている1954年の「アサヒカメラ年鑑」の広告には、タナー50mmF2.8付IIIFで\29800となっている=中期には50mmF2、末期の1958-59年生産のV3には50mmF1.9/F1.5となっており、このF1.8はおそらく最終型となったVP(M3に近いスタイル)に用意されたレンズだったであろう。しかしボディはほとんど作られることなく会社は倒産した。ボディの詳細は分からないが、このレンズにはライトバリュー値が絞り環に彫ってあり、そのボディにはLV値連動の露出計の仕掛けがあったのではないかと思われる。タナーはレンズメーカーではなく基本的にボディとセットで販売していたことを考えるとあながち無理な推測ではないだろう。またその頃のライカをはじめとした各社L/Mマウントボディに、レンズ絞り環と連動したLV値制御(LV値制御そのものはレチナをはじめとしてレンズシャッター機には一般化していた)のものはなく、他社向きの製品でもない。ともかく資料のほとんどない不思議のレンズである。何の偶然か「世界のライカレンズ Part2」写真工業社刊のP128-9に同じレンズが紹介されている。勿論同じレンズではない(読みとれたシリアルナンバーが異なる)。その紹介記事でも不思議のレンズと書かれてあった(どうしたものかレンズテストは不明となっている=偶発的な後ピンと書いているが、案外もともとフランジ値がLマウントレンズと少し異なるのかも知れない)。E43

さてヘキサーに取りつけた。その時代のキヤノンのタイプ2レンズとデザインは似ているが、タナーの方が仕上げは一段上である。口径の割に短いのはゾナータイプレンズの特徴だ。

距離環のすぐ上が黒い絞り環、その上のクローム部分にLV値が彫ってある。さてさてテストはこれからだ・・・テストしてみると比較的新しいレンズのせいか、色味やコントラストなど現代的な描写が意外であった。ただしゾナータイプレンズの多くがそうなように、像面の平坦性が良くなくて、絞りを開けると周辺部のピントが崩れてしまう=ピントをズラすと合ってくるので単純な球面収差ではない。絞って撮るか、やや近距離のデコボコしたような対象物を撮るのなら問題はないだろう(とりあえず中央部のピントは良好)。

9.トプコール 5cm F2 (初期型) 1950年代初めのレンズ。当時のニッコールやキヤノンのLマウントと基本的に同じデザインだ。下の後期型トプコールとは同じゾナータイプとはいえレンズ構成が違うとの話だが、比べてみると確かに違う。コーティングの差は小さなことだが、レンズの長さが異なり、旧タイプが長い。作りはどちらも同じ程度で、その意味では後期型もコストダウンの比較的目立たなさで健闘しているとも言えるだろう。ただし旧タイプはクロームメッキが、同時代のニッコールやキヤノンより少し弱いように見える(経年変化が出ている)。 写りは?はっきりと同時代のニッコール5cmF2やキヤノン50mmF1.8と比べて完成度の高さを感じる。具体的には周辺部の結像が絞りの開いた状態で「ひと絞り分」崩れないのである。これは「どちらかというと」ではなく「ある程度以上」の差がある。中央部は変わらないし、絞りをF8まで持っていくと見分けがつかなくなる。E40.5

レオタックスのキャップ付だ。ヘキサーRFリミテッドに取りつける。やはり同時代のレンズは見比べても区別がつきにくい。 

10.ミノルタスーパーロッコール50mmF2  1950年代後半のレンズ。初代ズミクロン50に範をとり、ほぼコピーレンズと言って良い(俗に言うエアーレンズ)。テストはこれからだが、ものの本によるとズミクロンと異なり新種ガラスは使っていないが程々の写りをするらしい(簡単なテストではF4以上に絞れば悪くない。色調もノーマルで、写りに大きな癖はない)。しかしデザインは寸胴で何となくバランスが悪く、仕上げもどうも冴えない。これも友人とトレードしたレンズで、最近少し興味を持っているオモチャレンズの1本である(ファンには失礼!)。43mm

キヤノン7に取りつけた。やはりこの時代の国産レンズは大きい(口径43mm−これでF2の明るさ)。寸胴で色気がないが、戦後復興のさなかに作られたレンズとしては上々である。こうやって見ると、キヤノン7はMライカにも匹敵する堂々としたカメラだと思う。

ズマリットなどと同系統のデザインだが、少し違う・・・一番似ているのはニッコール5cmF1.4である。ただし仕上げ/材質は格段に落ちる。むしろロシアンレンズに酷似している。しかしオモチャと言っても程度の良い個体が少なくて値段は結構するようである(ICSのプライスガイドによる)。

11.ヘキサー50mmF3.5  やはり1950年代の製品で、これもトレードレンズである。上のレンズ群は違うが、これは私から申し入れたもので、たいへん興味がある。「カメラ談義」でもエルマーコピーレンズとしてトプコールとインダスターの沈胴50mmF3.5を登場させたが、明らかにヘキサーはエルマーから範としつつも更に改良されたレンズであり、日本の技術陣の力量を評価できるものと期待している。テストすると2本とも「うりふたつ」の画像で見分けがつかない。ややキヤノンがマゼンタ系にころぶようだが、それとてポジを並べて比べないと分からない程度である。良くも悪しくもテッサータイプのレンズである。しかし同時代の赤エルマーと比べてまったく遜色がない事も記しておく。34Ф

左ヘキサー、右はキヤノン50mmF3.5である(デザインはそっくりだが長さが全然違う=レンズ構成はテッサータイプ)。どちらも持ち主が大切に扱っていたのだろう、驚くほど当時のまま伝世されてきている。両方ともエルマーを意識し、それを越えようとした意欲レンズである。当時の日本の技術者/メーカーの「ライカに追いつけ!」の熱気を感じ取れる、ひいては若い新生日本の息吹を表した製品である。今の日本社会にその熱気が見られるだろうか?勿論、為政者やメーカーだけではない、ユーザー/一般大衆も含めての話である。

12. ヘキサノン50mmF2.4L c 1997 極めてシャープ・ハイコントラストだが、やや神経質な描写で、絞り値によって描写が変わる。概して絞り過ぎると結果が悪い(絞りはF4-8だ)。中央はシャープだが中帯部で弛み、周辺でまた締まる・・・平坦性が良くない。マット仕上げの沈胴の操作性にスムーズさがない。E40.5。

左がF2.4L、右がF2。長さは当然に似たようなものだが、並べると沈胴のタイトさがよく分かる。

M4−2に取りつけた。大きさ・重さは適当だが、少しデザインが垢抜けない。仕上げは良いし、レンズも綺麗なのだが・・・何となくである。

13. ニッコール5cmF1.4L c 1950−55 この時代のレンズとしてはコントラストが高く、描写は力強い・・・珍しく国産レンズとしては「神話化」している。ただし問題としては色収差が残っている事である。近接できるが像面の湾曲が目立ち(絞っても改善されない)、DRズミクロンよりかなり落ちると云えよう。勿論、距離計と連動するわけではないのでメジャーが必要である。ゾナーコピーと言われている。このレンズのある解説本に画質はLマウントのレンズがSマウントより良いと書いてあったが本当である・・・最近入手したS2に付いていた1.4は明らかに周辺で落ちる。E43。

Leica IIIf/c-1/2に取りつけたニッコール。やはり大きさのバランスが取れない(目の錯覚でボディのレンズマウントあたりが凹んで見える)。見た目の問題だけではなく、前下がりの取り扱いのしにくさがある。これもLeica−M型ボディにしたほうがいいだろう。

ニッコール5cmF1.4(純正フード)と8.5cmF2(キヤノンの50Фフード)Lマウントレンズ。非常に仕上げが良い。この頃はニコン以外のレンズも仕上げの良いレンズは多くあったが、これらは特別である。D.ダンカンが激賞したと言われる2本のレンズである。

M3に。やはりMライカボディでないとバランスがとれない。外見の問題だけではなく、その重さに必然性があるのだろう。

14.ニッコール5cmF2 C 1957−? このレンズは多々バリエーションがあり、これはニッカが輸出向けに作った「タワー35」に付いていたレンズである。特徴は絞り環が真鍮に黒塗装の仕上げ。このレンズにはオールクローム、先黒、絞り環のみ黒(このタイプ)、沈胴タイプなどがある。40.5Ф

キャップに「TOWER」とプレスされている。私は昔のボディには興味がないので、タワーのボディとばらして売ってくれたのである。気のいい主人である・・・下町の小さなカメラ店で購入。

ニッコール50mmF1.4では大きすぎ、F2なら何とかだろう。それでも当時の国産のレンズは重々しいと感じる(ライツ・クセノンやズマリットの影響だろうか?)。

15.キャノン50mmF1.4 p 1958−1973(これは1960−の後期型) 極めて綺麗なレンズ。私の持っているキャノンLのレンズ中、最も美しい。同世代のズミルックス50mmとほぼ同じ大きさで、大きさ・質量共にバランスもとれていて取り扱いやすい。画質などの細かな話は後日・・・評判よりずっと良いことは確かである。純正フードも入手した・・・たくさん作られたためこの時代のキャノンLのフードは手頃な価格で手に入りやすい。E48。

M5+キヤノン50mmF1.4+純正フード。M5にも似合う堂々としたレンズである。私はこのデザイン・仕上げが大好きである。郷愁かも知れない・・・そう、私が写真を始めた頃の一眼レフのレンズは、皆こんなデザインだった。

16.キヤノン50mmF1.8−タイプ1 c この構成のレンズの最初期型レンズ。仕上げは美しく評判は高い。昔のレンズだから仕方ないがF2.8までは周辺部が相当甘い。しかしそこからは急激に良くなり、F5.6で最新のこのグレードのレンズと同等に近くなる。キヤノンLらしい甘ったるいクールさを持った良いレンズだと思う。ただし簡単なテストしかしていないので結論は少し先に延ばそう。E40/1953−57(これ以降タイプ2−3と変更があるが、1975年の最終まで同じ設計で生き残ったキヤノンRFの名標準レンズ)。

タイプ2と比べて欲しい。当時のキヤノンレンズは曇りやすい性質を持ったものもあったが、コーティングや鏡胴の造りも含めて仕上げは文句なくいい。残念だがそれがタイプIIでは悪くなってしまった。しかし周辺部の結像性能は新型が改善されており、購入時どちらを取るか難しいところである(価格は同程度ならI型が倍ぐらいする)。フードは口径が同じなので共用できる。

M5に取りつけたキヤノン50mmF1.8-I 、なかなかさまになっている。

M3に。純正レンズ以上にサマになる。性能でも仕上げでも国産レンズの一部は、比較的早期にライカに追いついていた。

17.キヤノン50mmF1.8−タイプ2 P 1957− タイプ1と同じ構成のレンズ。鏡胴のデザインが1957年一斉に変わった。公式には性能面は同じとされているが、実験すると35mmF2.8と同様、タイプ1より多少改良されている(逆光特性や周辺の収差補正)。E40/1957−1959(タイプ1は1953−57、タイプ3は1959−1975)。

純正のフード付(35mmF2.8と共用=35mmF1.8/F2だとケラれる)である。これが案外見つからない。性能面では改良が認められるが、デザインは垢抜けず、材質の変更による(コストダウン)強度の不足が感じられる。このレンズでは認められないが、タイプ2レンズ全般に各部にガタが出ているものが多い。

18.キヤノン50mmF1.5 C 後のF1.4とは違って当時のハイスピードレンズの常識だったゾナーコピーレンズである。ニッコール50/1.4−2やトプコール50/1.5、ジュピター50/1.5その他多数。レンズの貼り合わせ面が多く、バルサム切れの心配と、貼り合わせの技術的な困難さで気難しいレンズとなりやすい。つまり性能・定格に安定性が欠けることがある。そして収差の補正に完璧さを求めにくく、やはり描写においても癖のあるものが存在する。このレンズに関しては、F4まで絞ると全面に極めてシャープで独特の線の軟らかさも兼ね備えている(同じタイプのニッコールの骨太さとは対照的)。しかしF2.8より開けるとやはりフワフワのピントでやや実用性に欠ける=F1.5なのに絞って使うという奇妙なこととなる(一眼レフなら明るいとピント合わせがし易いというメリットがあるのだが)。色や歪曲などの癖もなく良いレンズだけに惜しい気がする。E40/1952−57年

キヤノンVTに取りつけた。鏡筒は短いがレンズの大きさや頑丈なつくりによって堂々としている。ボディが負けてしまうようで、同時代のキヤノンよりむしろM-Leicaが似合いそうである。

レンズ・鏡胴ともに古いレンズとしては最良の部類である。キヤノン標準のE40なのでE40/A42のフード等のアクセサリーが使えて大変具合がよい。この時代ニコンと並んでキヤノンのLレンズのつくりは最高である。憎らしいほどタフ&ニート・・・美しい。

19.キャノン50mmF1.2 p 1957−1968  キャノンのハイスピードレンズ。中心部は素晴らしいが、浅絞り時にはノクチと同様周辺部はホヤホヤ...ただし周辺光量の低下は最小限である。40年前のレンズとは思えない完成度で、キヤノンファンなら持っていてよい標準レンズだろう。E55・・・沈胴ズミクロン50と同じく前玉が出っ張っているので、フィルターによってはガラスが当たることがあるかも知れない。E55

この吸い込まれるようなレンズに大口径レンズの魅力があるのだろう・・・クールな私にも、その心情は理解できる。

MPに。どうもバランスが良くない。

20.キヤノン50mmF3.5  C  知人から譲り受けたものである。かなり綺麗で性能的にも悪くない。テッサータイプとしてはいい方だろう。先般往年の 赤エルマーをテストしてみたが焦点移動が大きく使い辛いものであった(中心部の話だがF4でピントが合い、F5.6で外れてF8でまた合う)。これから使い込んでみよう...現在は自分の持つバルナックライカIIIaに取りつけている。「カメラ談義」収録。E34またはシリーズ6/1946−1956(このレンズは1950年代前半のもの)。

Leica III a に取りつけた。時代的には20年の差があるが、いかに民生用のカメラ・レンズが戦争によって発展しなかったかが分かるとも言えるし、「ライカに追いつけ!」が標語になったのも理解できる。1950年代にはエルマーと変わらない性能と仕上げを達成した。ここではキヤノン得意の薄型フィルター(この時代としては進んだコーティング付)を着けている。

持ち主(ワンオーナー!)が丁寧に扱っていたようで(実はあまり使っていない)元の姿のままである。

21. キャノン50mmF2.8L p 19555−61 リジッドのテッサータイプのレンズ。その甘さも抜けの良さもエルマー2.8と良く似ている(OHしたら劇的に良くなった)。この頃のキャノンLレンズのデザイン・使用感は良いと思わない。E40/

1957年からの新デザインのレンズとキヤノン7。左から50mmF2.8タイプ2−35mmF2.8タイプ2−50mmF1.8タイプ2。まさにそっくりである。生産効率としては良いかもしれないが、どう考えても「やりすぎ」である。少しの色気は欲しいものだ。

22. ジュピター50mmF1.5L b 1987 これも良い性能のゾナーコピーのロシアンレンズ。インダスターより高級品とされている。明るい割には小型である。比較的強い糸巻き型の歪曲有り。「カメラ談義」収録。E40.5。

Leica III f/c-1/2 に取りつけた。F1.5という大口径レンズとしては小柄で、バルナック系にはズマリットなどよりバランスが取れる。絞り環にクリックがない以外は使用感も悪くないだろう。写りも糸巻き型の歪曲収差以外は遜色がない。

23. インダスター5cmF3.5L c 1952 エルマーコピーレンズ(と言うより中身はテッサーコピーと言うべきか?)。周辺を除き実用レンズである・・・やや黄玉。たくさん持っているが、このレンズのみが私の生まれた年の製品と同定できる。A36。*

24. インダスター50mmF3.5L b 1973 沈胴式を除き、私の持っている50mm標準レンズでは最もコンパクトで軽い。周辺に甘さが残るが性能は一人前である。上のレンズのリジットタイプ。「カメラ談義」収録。A36。*

左からインダスター50/3.5沈胴、同リジット、同2.8。これら3本のインダスターレンズは日頃世話になっている3人の友人達に1本ずつ差し上げた。

25. インダスター53mmF2.8L b 1992 抜群のコストパフォーマンス。本家エルマー50mmF2.8にひけをとらない・・・色のりはこちらが上。デザイン・操作感の悪さが足を引っ張っている。「カメラ談義」収録。E40.5。*

26. ノクトン50mmF1.5L b 1999 浅絞りの順光でたいへん良い絵を作る。逆光に弱いという説があるが私はそうは思わない(勿論、同じような明るさのズマリット、ズミルックスと比べて)=私は52Фの汎用メタルフードをつけて使用している。平坦性が極めて高く、浅絞りで安心して使える。E52。

M5に着けると落ち着きがよい。

M3にフード付きで取りつけるとその大きさが分かるだろう。素晴らしい性能のレンズだが、もうひとつ普及しないのはこのバランスの悪さだろうか?

*このレンズについて読者より情報が寄せられた。性能のことは問題なしの良いレンズだが、ヘリコイドの使い心地(ターレットの彫りが浅すぎる)という点でライカレンズなどより劣るようである。比較的最近発売のレンズにおいては改良されているが、ノクトンにおいてもこの種の改良があったようだ。以下に記す。

ライカ用の50mmレンズを購入しようと思い、今日仕事で出かけた帰りにカメラ店に寄ってみて知ったのですが、コシナ・フォクトレンダーNokton 50mmにはピントリングに刻まれた滑り止めの溝が少し深いタイプが存在するようです。Nokton50mmを取り出してもらい、手にとって見ているうちに気が付いたことなのですが、以前触ったときよりもピントリングの引っかかりが良いような気がしたのです。
ほかにもコーティングの色が以前と違うような印象があったのですが、私の気のせいかとも思い店の人に聞いてみたところ「そのような情報はコシナからは伝わってきていませんが、電話して聞いてみましょう」と、すぐに電話をして確認してもらえました。はじめは「商品の問い合わせはケンコーにしてほしい」というような事をいわれていたようなのですが、店員さんが「技術的な事はケンコーに問い合わせてもわからないから」と食い下がってくれたので以下の二点の情報を教えてもらえました。

1.コーティングに関してこれまで変更はない
2.ピントリングに関して、溝を深くしたタイプが存在する

2について、一部製品にテスト的に行われたものなのか、ある時期以降の製品すべて変更されているのかについては不明です。

*上記のことは私も確認した。ノクトン50mmのみならず、ウルトロン35mmやカラーヘリアー75mmもブラックに限ってターレットの改良が見られる。

27.カラースコパー50mmF2.5 B  新しいレンズが早くも手に入った。当然画質チェックはまだだがレンズのデザインは今までのコシナ=フォクトレンダーのデザインを踏襲しつつ少し手の込んだものになっている。絞り環やレンズ基部の処理が何とはなしにズマロン35/2.8やズミクロン35/8枚玉と似ている。またピントレバーは大型の操作感の良いものに「ようやく」なった。材質も今までのアルミ系統から重くなった(真鍮を多用したものか?)。この次の28mm同様楽しみである。最初の平坦性を見るテストでは残念ながら期待より下回った。それというのも開放からF4までの周辺に崩れがあり、それ以外の素晴らしい性能と比べると惜しいと思われる(明るいにもかかわらずノクトンの方が良い結果である)・・・2本目のテストで良いものに当たった、これなら良好=何と!現代のレンズとしては珍しく個体差がある。下に登場する28ミリとたいへん似た描写で、ややクラシカルな線の細さが特徴だろう。ある意味で「新品で買えるクラシックレンズ」の趣がある。次はもう少し踏み込んだ撮影になる。 現在標準レンズはガウスタイプ、簡便なレンズであってもテッサータイプとレンズ設計が収斂されているなか、コシナはヘリアー50/限定(いわゆるヘリアータイプ)、このレンズ(変形トリプレット=昔のゾナータイプを彷彿とさせる)と一般と異なるタイプの標準レンズを次々と開発し、レンズメーカーとしての面目躍如である。おおいに評価したい。実用に資する標準レンズの多様な展開を期待する。 2002/39Ф

暗いが非常にコンパクトで、レンズ構成図を見ても今までのコシナ=フォクトレンダーレンズとはかなり違うことが分かる。なぜ今F2.5か、理由の分かる日も近い=おそらくは昔のゾナーの弱点である、絞り開放付近での近距離での像面の折れ曲がりを緩和させるためにあえて小口径にして、レンズを短くできるメリットを生かしたのではないかと思われる。結果として長さも径も小さくなり、RF用のコンパクトな標準レンズに仕上がった。

M4−2に。ライカボディに見合ったいい大きさ、いいデザインである。

生産中止になり在庫処分となったので(安い!)白レンズを買った(2007.9)。どうやらコシナはツァイス系(+少数のフォクトレンダーVMマウントレンズ)を中心に商売をしていくようだ。

28.フォクトレンダー ヘリアー50mmF2.8 C 2001  ベッサTの限定版について出てきた。沈胴レンズについては以前から希望していたのだが、限定という形にせよ実現したのは有り難いことである。テッサータイプと考えられ易いが、私はテッサータイプの球面収差の大きさに疑問を持っており(と云っても恥ずかしながらエルマーその他何本も所有している)、もう少し高次の収差補正したレンズを希望していたが、まさか往年のヘリアー(ヘクトールも本質的には似ている)になろうとは・・・しかし数十年も前に滅んでしまったレンズをどうして引っ張り出してきたのか?興味があり、今後なるべく使ってみたいレンズである....使ってみるとやはり古いタイプのレンズである。最新の技術をもってしても、現在の標準レンズとしての最高レベルの性能は望めない。しかしコシナ=フォクトレンダーの開発への敢闘精神には賛辞を送りたい。E27

写りはほどほどだが、他のレンズと比べると造りがたいへん良くて(往時のライカと同等)、使わないのに車での撮影旅行には必ず持っていく。これはビデオカメラ用のフィルターをつけている。絞りの位置や形がプロトタイプのエルマーと似ている。これをカメラに装着して気楽に撮り歩ける日はいつ来るのだろう。

ついでに云うと、ボディはあまりに趣味的に過ぎて、オモチャのように見えていて購入は控えていた。そのため今回買えたとも云えるし、使ってみると案外使えることも分かった。運が良かったと思う・・・Tが出たときに「試しに」買わなくて。フィルターはカメラ用としては黒枠しか知られていないが、ビデオカメラ用に27mmの白枠があった(Viviter)。

29. トプコール5cmF3.5L c 1952−55 これもエルマー50mmF3.5コピー。ただし総合的に見ると、性能でも仕上げでも本家を凌いでいるかも知れない。前玉に傷が多くいずれは再研磨にださねばならないだろう。A36

M2との組み合わせ。案外サマになる。

30.トプコール50mmF3.5 C 私も1本所有のトプコール沈胴レンズは有名であるが、リジッドは話題にあまりならない。アルミ削り出しの滑稽なデザインが足を引っ張っているのだろうか?これと同じ仕上げの90mmトリプレットもある。しかし外見とは違って実力は充分である。私の感想としては同スペックの各社エルマー・テッサーコピータイプのレンズの中でも一級品だと思っている(このタイプとしては末期のLレンズだ=レオタックスエリートあたりに着いていた)。不思議な話をひとつ...私の友人がこれと同じレンズを持っているが、レンズ前面の銘板が外れていた。そしてこのレンズもとれていた。このレンズの銘板の貼り付けに不備があったのだろうか。描写は開放から充分な画質があり、しかし絞ってもそれほど変化がない。色味も自然で古いなりに完成度の高いレンズであろう。E34/1958−1961

M7に取りつけた。アンバランスなデザインだが悪くない。回転ヘリコイドで、レンズ先端が回転して絞り操作をする(沈胴の同レンズより操作性は格段に良い)。この場合はフード(これはキヤノンのE34フードを流用)をつまんで回すことになる。この個体は鏡胴・レンズ共にたいへん綺麗である。

トプコール50mmF3.5非沈胴(前面の銘板が外れている)とカラースコパー50mmF2.5。元を正せばどちらも原始的なトリプレットレンズの末裔である。ゾナーも含めてレンズを短くできる特徴がある。

違う角度から。

31.トプコール5cmF2L P 1956−7 名レンズと云われているものの最終型。だいたいが3タイプあり、仕上げなどは安直になる代わり、レンズは改良されていっているようである。このレンズはかなり珍しいものである。性能はごく上等な絵ができる、しかしまだまだ使わないと本当の実力は分からない(内心は期待している)。40.5Φ

非常に綺麗でしっかりとした仕上げである...ヘリコイドリングはブラックペイント。初期型より作りは甘くなっており、ピントレバーはあるがそのストッパーはない(現代のレンズと同じく内部で止まる)。ではなぜレバーが付いているのか?それは分からない。

キヤノンVTに取りつけた。大きさもF2クラスとしては平均的なところだろう。

32.安原50mmF2.8 C 2001年  ついに来た。3ヶ月前に予約したレンズである。ボディは趣味性が強く見送ったが、レンズは値段も最新のものとしては格安で悪くない。マルチコーティングであるが、3群4枚構成の典型的なテッサータイプである。なぜ今このようなクラシックなレンズなのか、そのフィルター径の特殊さ(35.5Φ=アグファのレンズなどに使われているサイズ)など必然性に不思議なことが多い。中国で作っているとのことであるが、仕上げは良好である。シルバークロームはよく見ると少し部位によって色が異なり、これは上のズミルックスとも共通することである。このレンズは普通の方法以外の流通で販売されている興味深い製品で(残念なことに最近業販も開始し、直販より安価に扱っている=ポリシーとは別に経営的には苦しいのかも知れない)なんとか早いうちの解説をしたいと思っている。実写ではさすがに現代のレンズで中央部はコントラストも高く、色の再現もリアルでパチンと写る...しかし昔のテッサータイプよりもかえって周辺の崩れが目立つ(中央部のシャープさがそれを強調しているようだ)。これはかなり絞らないと完全には改善されない。

よく見ると一番下の被写界深度環が白くてキメも細かい。その上の距離環は少し黄色く、更にその上は黄色味がかかる。絞り環・ヘリコイドの操作感は悪くない。写真はフィルター(このサイズは黒しかなかった)、LMリング、その辺にあった古いメタルフードが偶然合ったので着けてみた図である。レンズ自体は先すぼまりで好みが分かれるところだろう。

安原一式に取りつけた。レンズキャップも金属製。大きさや価格、性能など手頃なレンズだと思う。

33.ジュピター50mmF2 C  1962年の製造で、戦前のツァイス・ゾナーのコピーレンズと云われている。もちろんコーティングや新種ガラスの採用など、単なるコピーではない。しかし基本的に同じ設計のレンズが60年以上も作られるというのは大変なことである。ソビエト=ロシアカメラは独特の世界を作っている。E40.5Ф

M5に。古いレンズだが性能はあなどれない。残念ながら鏡胴と同じで、見えない作動部も材質(アルミ系)が良くなくて作動感は今ひとつだ。ネットリとした動きではなく、スカスカとして、そして時々動きが渋くなる...時々グリスアップをしよう。

これは全体がアルミでできている。従って長い間に傷や歪み(これの場合はフィルター枠=ここが変形しているものが多い)が出ている個体があり、これも歪みの修正と表面の鏡面仕上げをしてみた。フィルターやフードは本来の機能とは別にレンズ先端の強度補完に必要である。これはキヤノンのA42のかぶせフードである。これは便利なものでフィルター上からでも被せられるし、シリーズ6フィルターを挟んで使うことも可能である。さらに偶然か必然かわからないが、E39.E40.E40.5にピッタリ取りつく(フィルター枠内径は異なるが、外径は同じである...E41は不可)。 テストしてみたらビックリするぐらい良い描写である。まだたくさん撮ったわけではないので色々な局面での一般化は無理だが、少なくとも同時代のF2クラスのレンズ(ライツ・キヤノン・ニコンなど)といい勝負をする。これがたった8000円...レンズと言うモノの値打ちに一抹の疑問を感じてしまう。「カメラ談義」に書いたジュピター35.50.85のレンズよりも更にこのレンズは高価な他社製品と互角の性能を発揮している。確かにソビエトレンズの当たりはずれは大きいが、良い物にあたると文句のつけようがない。価格を考えると同じレンズを3−4本程度買って、一番いいレンズを選んだとしても国産と等価、ライカに至ってはかなりのお釣りがくる。実用的だ。 ロシアンレンズと巷間では呼ばれているが、実際はウクライナ・ベラルーシ・ロシアで作られたため「ゾビエトレンズ」と云うのが正確だろう。ソ連崩壊後のレンズはあまり見かけない。

34.ジュピター50mmF2 B 2001年!(一般的なロシア式の表示ならそうなる) 上のレンズの後期バージョンである。上が直進ヘリコイドであるのに対しこれは回転ヘリコイドで、レンズそのものもコーティング以外にも多少レンズの曲率が異なるようである。ジュピター35mmでも経験したが、ソビエト=ロシアンレンズも進化しているようである。何と開放から中央部は使える。F4で使える範囲が広がり、価格を考慮しなくても相当の実力である。少なくともF3.5−2.8クラスのテッサータイプレンズより一枚上手である。上の同レンズよりも少し抜けがよい。40.5Ф

Leica DIII に取りつけた。両者には70年近い時代差がある。このレンズは新品(同様)で買えるクラシックレンズそのもので(真正のゾナータイプ)時間の経過と共に性能もかなり熟成されていて「高コストパフォーマンス」レンズだ。同じジュピターでもF1.5より性能はいい。

やはりキヤノンのかぶせ式フードを取りつけた。そのままだと旧型に比べてデザインの間が抜けているようだが(仕上げはこちらがずっと良い=ペイントのような艶を持っている)、これで遮光効果と共に俄然格好良くなる。

35. エルマー50mmF3.5 B  1953  俗に言う「赤エルマー」である。先日買ったIIIFに付いてきたレンズなのだが、評判どおりでテストすると悪くない結果となった。名レンズ、エルマー3.5の末期のレンズでそれなりに熟成されたのだろう。Mの3.5と同じレンズ構成と聞くが、同じならよりコンパクトなこちらを取りたい。絞りリングの操作性の悪さは、その気になればヘキサーなどの絞り優先AEに頼ればいいのである。

JR大正駅の東側の木津川に架かる鉄橋にて。ややシャープ感は足りないが実用には充分だ。特にここではF11ぐらいまで絞っているので周辺まで安定した描写である。絞り操作はしにくいが、絞り優先AEボディとの組み合わせなら、外見はともかくとしてぐっと使いやすくなる。

IIIF+elmar5cmF3.5red 使いやすいとは言えないがバルナックとはよく似合う。

36.キヤノン・セレナー50mmF1.9  C  私の探していた最後の古い国産レンズが、とても安価に出ていた。Leicaレンズを除いて一般的なライカマウント国産レンズは値段が下がり(当たり前だが)買いやすくなっている。しかしたいていの欲しいレンズは持っているため何となく横目で見ていたが、あまり付き合いのないカメラ店のショウケースに「持っていって下さい」と言わんばかりに並んでいた。新型レンズはともかくとして、もう古いレンズはこれでいいと思う。 E40

ここで写っている金属部の汚れや錆はコンパウンドで綺麗になった。レンズ・鏡胴ともに問題はなく、レンズ鏡胴内の反射防止用のマット塗装に劣化が見られることぐらいが気になる点である。これからテストに移る。古いレンズ購入は久しぶりで、少しテストしてみたい。なぜこれが欲しかったかは後日語る。ヘキサノンやフジノンの古いライカマウントレンズも捨てがたいが、集め始めるときりがないので「お終い」。

さてそっくりの外観のズミタールとのテスト。結果は絞りが開いている(開放〜F4まで)状態ではキヤノンの圧勝、F5.6で互角になり、あとは似たようなものだった。1950年代初めのレンズとしてはかなりいい結果だ。開放から比較的良くて、その代わり絞ってもあまり向上しない(もちろん実用的には問題なし)今風のレンズだ。反対にズミタールはF4まで周辺部の画質が落ち、しかもボケ味が汚いので余計に悪く見える。しかし絞るとぐんぐん画質が向上し、いわゆる「絞りの効くレンズ」古風な写りと言えよう。

上キヤノン50mmF1.9、下ズミタール50mmF2。そっくりの意匠である(もちろんキヤノンが後発でデザインを真似たのである)。これだけいいと初代のズミクロンとの比較もしてみたくなる・・・今回はズミタールと比較するのが公平と考えたが、テストするたび昔のキヤノンSレンズは侮れないと感じる。「ライカに追いつけ!」の時代の、ちょっと無理したF1.9は充分魅力的なレンズだ。同時代のキヤノンの明るいレンズ(28mm/35mm/50mm/85mmなど)はどれも優等生だ。これまで50mmF1.9だけは縁がなく(たいていがボディと込みになっていて、同時代のボディはだいぶ落ちるため買う気になれなかった=ボディはPや7まで待たないといけない)、今度たったの1万円である店の店頭に並んだのを買った。最近はこの手のレンズの流通が少なくて、以前高く仕入れたレンズが棚にそのまま乗っているのが普通だが、ボチボチ安く出回るのだろうか?それともネットオークションで行ったり来たりするのだろうか?

37.コシナ・フォクトレンダーHELIAR50mmF2  2009.11  限定500本でHELIAR50mmのF2/F3.5が製造された。このうちF3.5モデルはフードや鏡胴の仕上げに差があるだけで、以前にベッサTグレイに付いていたレンズと同じものである(仕上げが違えば別モデルとも言えるが…)。実物を見るともっと素晴らしい仕上げであることが分かる。ニッケルメッキ、沈胴しそうに見えてリジッドの鏡胴、明るさ…どう考えても「ひょっとこズマール」を意識していると思われる…レンズタイプはズマールの変形ガウスではなくトリプレットから進化したヘリアータイプ(トリプレットの一群と三群が貼り合わせの五枚構成)である。ブランド時計のような箱に入り、L/Mリング付きで実売\63,000、実用を考えないコレクション品としては安いと感じた。もちろんオリンパスE−P1に取り付けてのテストでは立派な現代レンズとしての性能を持っていることは明言しておく。

ニッケルメッキなのでやや暖色の梨地(少し強調しているのか?チタンの色にも似ている)。とにもかくにもキッチリと作っている。

フードはブラックペイントのメタル製ねじ込みタイプである。フィルター径は39mm。

38.Voigtlander HELIAR 50mmF3.5 新しいレンズではなく2001年に出た限定レンズのリジット版だ。仕上げは良く、写りも申し分ない…Φ27mm

幻のマウンテンエルマーに似せたデザインでマニアの痛いところを突いている。上のF2モデルより画質は一段良好=F2モデルは明るくするために少し無理をした設計のようだ。

39.ヘキサノン60mmF1.2 b 1999 ハイスピードレンズの常として判断が難しいレンズだ。ノクチと違い傾向ははっきりしているが、やはり開放−F2.8までは中心は良くても周辺に向けて軟らかく崩れていく。あとは1.4クラスのレンズとそれ程は違わなくなるが、せっかくの明るさを生かすにはかなりの経験を積むしかないだろう。ノクチと同じように「こんなもの」と割り切って暗いところ専用に使うか・・・実用的には問題ないが「必然性」がもう少し欲しいものである。2本試したが少しボケ方が異なった。今の国産レンズとしてはバラツキがあることになり、値段のことを考えると問題が残る。E58。

ヘキサーRFに取りつけてみた。さすがにデザインは良く合う。色は違うが50mmF1.2も似たようなデザインである。

丸子船最後の船頭、山岡サスケ氏。矢橋の帰帆島にて。これでは絞っているためにボケ味の良さは分からない。しかし絞っても硬すぎない描写は捨てがたいレンズだ...60mmという中途半端な画角だが、外付けのファインダーは面倒なので50mmと75mmのフレームの中間あたりで狙う(自分でもだいたいが適当なのかと思う)。

40.無一居 花影S1 60mmF2.2  2014.9  E40.5

ずいぶん前に入手していたが書き込むのを忘れていた。L/Mlリングを介して距離計に連動する。50/75mmのフレームの中間あたりでフレーミングするしかない。タンバールコピーレンズで、実際の写りはタンバールを使ったことがないので分からない。鏡胴は真鍮に黒メッキらしく重い。フードも金属削りだしである(これは真鍮ではなさそう)。コーティングはマルチなので色は綺麗に出るしveiling glareも現代のレンズのレベルだろう。ただし収差ボケが著しいためフルサイズならある程度絞った方がよいし、絞り開放ならAPSでちょうど良さそうである。絞りにクリックはなく、ヘリコイドも回転式なので速射はできない。近々に画像も出すつもりだ。

ボディはLeica M Typ262、最短撮影距離1mからの撮影。ボディのレンズポジションによって少し周辺が変わるだろう(ここではOFFとしている)。この距離ではF2.2の開放ではゆるすぎ、F5.6では硬くなるので、絞りF4ぐらいが良さそうである。


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