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ヘキサーRF

1999年、ライカ・ブギウギーの締めくくり

近年のライカブームが結果的に引き起こした国産のライカ系レンズ、ボディの開発はついにMマウントのヘキサーRFとそのレンズ群の衝撃的デビューによって、2000年を迎えようとしている。この一連の動きにはやや行きすぎた所もあり、いち早い購入も考えている人も多いようである。そこで今回は12/22とかなり早い時期に入手した私の「ヘキサーRF」を評論し、冷静な目で購入を考えてみる参考となることを期待する。断って置くが日が短く不正確な所や(詳しいテストが済んだら、後日このページを改訂することで了解していただく)、初期出荷分にありがちな多少の問題点も含まれている可能性もあるので、その点留意していただきたい。また特に断りを入れていない場所も、その妥当性からM6やCLEを比較に見ている点も明記しておく。


12/22 ようやく手に入る。10月にアサヒカメラ11月号のデビュー記事を見て、すぐに予約を入れて、その店の予約の一番となってこの有様である。発売日は最初は12/3とのアナウンスだったが、次に12/20以降それも年内は無理かもしれないとの事となった。別に急いでいた訳でもないので、のんびり待つつもりだったが、12/21明日入るかもしれないとの連絡があり、あっさりと翌日私の手の上にあった。以前から、そしてこの間、またその後も新ヘキサーについてはオフレコの情報が交錯し、私も色々な事を偶然必然に知ることとなったが、これらのことは現物を前にするとどうでも良いこととなる。私はそれらの経緯よりカメラそのものの価値を考えたいと思う。まず、触ってみて感じたこと。

1. 持った感触、バランスは良好。評論家が書いているより小さく、軽く感じる(計ると確かにM6とほとんど同じである)。しかし実に頑丈そうでライカより無骨な印象すらある(2002年現在、使ってみて実際に非常に強度は高い)。デザインは好みの問題もあるが、M5や初代ヘキサーの好きな私にとっては弁当箱型はおおいに結構。昔使っていたトプコンREスーパーとも同じポジションが得られる。当たり前の事とも云えるが、カメラボディは丸い物と四角い物があり、どちらが良いとも結論できない。おおむね業務用は四角いデザインが多いが、これは四角さが良いというより、面にスイッチ、レバー、ノブなどの取り付けの機能を持たせることに意味があるようである。丸いとホールディングは良い面もあるが、スイッチやレバーなどの動きに規則性が持たせにくく、特殊な形状となりやすいことがあるのだろう。私はそのような理由で角形が良いと思うが、M6は好きである。丸い部分が少なく、しかもそこにホールディング以外の目的を持たせていないのである。そして理論的には容積に対して表面積が小さくなるので、軽くコンパクトかつ丈夫にに作れることとなる。

さてヘキサー(以下ことわりがなければ新ヘキサーを指す)はM5やトプコンと同様に右手でしっかりと掴むように保持し、左手の親指と人差し指でコの字型を作り左側からボディの左下端を押さえ、薬指以下を軽く曲げ下から支える。そして人差し指でレンズのピントレバーを動かす(どうしてもピントレバーはライカには必要と思う)。重さや触感も全く違和感なく持てる。基本的にM5.M6と同じであるが、四角いM5.ヘキサーは角に親指の付け根のかかりが丸いボディより良いので多少使い易いこととなる。M6とで試して見ると分かる。いつも書くように極限状態での撮影では僅かな差が結果に出ることもあるのである。M6型が使い易いと思えば、M3.M2.M4.M6を使うべし、ただし撮影ポジションだけが大切ではないことは云うまでもない。さて話を戻して、ヘキサーのラバーの感触はM5の固いバルカナイトと比べるとグニャグニャして気持ちが悪いが、ホールディング感は右手側(特に前面)のちょっとした出っ張りを含め良好である。ただし少し使っただけで傷が付き、表面が少し剥離した。耐久性に不安を持つ。私には子供が居ないので孫子の代までもつ必要はなく気にはしないが…。塗装についてはブラックのマット仕上げ、キャノンのN.F−1のようで見た目は悪くない。触ると私の持っているM5.M6.CL.CLE(これがまたそれぞれ仕上げが異なりどれが良いとは云いにくい)のブラッククローム仕上げ(更に旧ヘキサーも)と比べマット面はザラザラしており手触りはやや落ちると見てよかろう。強度的には不安もありそうだが多分問題ない。と言うのも私の撮影時によく着るコートのボタンが真鍮でできており、これに少し触れるとボディに傷が付く(普通のペイントならすぐ付く)ことがあるのだがM6もヘキサーもほとんど傷つかず、むしろ真鍮の粉がボディに着き、それをセーム革で拭き取るということになる。M6は使い込むと角が薄くなり下地の灰色が浮かんでくる。ヘキサーはかなり使っても(2002年現在)びくともしない。バックドアのペイントが剥げてくるだけである。

2.シャッターボタン回りやシャッターリング等のいわゆる軍艦部の各作動部は作りが少し軽く質感が良くない。操作感も軽く節度がない。ボディ本体の頑丈な作りに比べると要するに「ちゃっちい」のである。コンタックスG2やフジTX−1の方が良い。ただし使いにくくはない。AEの解除ボタンはCLEに比べ格段に使いよいし、シャッターボタンのロックが給送モードやセルフタイマーの変換スイッチを兼ねているのも良い(無論これは現在のAFカメラでは標準化されたことだが)。シャッターを切る。予想よりはるかに静かで軽い(音だけでなく振動も)。旧ヘキサーとは違った感じだが同じ考え方で作っているようで、評論家の書いているよりはるかに良いと思う。好みの問題もあるだろうが、最新の技術で作っているのである。よくここまで追い込んだと(1/4000の最高速、シンクロが1/125)思う。M3〜5のプルンとかニコンS3のパタンとかいう音も悪くないが、ヘキサーの音はレンズシャッターのようなプツンという音とモーターのシューンという音が繋がった新しいシャッター音と云え上々であると云えよう。音だけの好みならMシリーズ(M3の音は別格である)のスローシャッターの後引き音「プルン・ジィー…」は大好きである。まるで子供の頃、田舎での経験。夏の昼下がり縁側で昼寝をしている時、耳元で大型の羽虫の飛ぶ音を聞いたような音なのである。あるいは飼っていた猫が機嫌の良いとき、低く喉を鳴らすような音とも感じる。私は文学的とも云えるライカの音も含む触感も、ヘキサーやTX−1のような機能に徹した触感にも共感をおぼえる。良い物は一つではないと知るべきであろう。

3.ファインダー。これが一番問題が多い。購入を考える人はぜひとも覗いて確かめて、納得してから決めて欲しい。他の部分は客観的に見てライカと同等か部分的には勝っているところもあり、劣っていると思われる部分も実用的に問題があるとは云えない。しかしファィンダーだけは別である。まず倍率が小さいのは28mmを多く使う人や眼鏡を着用している人にとってはかえって良いかも知れないが、28mm以外は全てのレンズで使いにくく、135mmは「付いている」と云う程度と考えた方が良い。M6でも実用的には90mmとしている人も居るようで、その意味では90mmでも具合が悪いのだろう。私は35mmを中心に撮影するのでM6程度が一番使いよい。28mmはフレームを見ようとすると目玉を回す必要があるが実際は問題ない。M5でも同じだがフルフレームが28mmと思えば良いのである(実はM6の28mmフレームは少し小さく、そのとおりに作画するとフレームの外側が写りこむ)。0.85でも良いのだが、それでは28mmがファインダー内で確認できない、私にとっては外部ファィンダーは問題外なのである。28mmより短いレンズ、135mmを越えるレンズは仕方なく外部ファインダーやビゾフレックスを使うが、フィールドワークには全く不効率という他はない。ここまでは使い勝手の問題だが、ここからは性能の事を述べよう。ファインダーの縁の内面反射を押さえ切れていないのだろう、ファインダーの下部が少しハレるのである。条件によるがトップライトではファインダーの縁が光って目障りですらある。フレームの外側であるので慣れるべきなのかも知れないが、この部分は30年近く前のCLより劣り、昔のキャノン7やニコンS系のレベルである。距離計部分の見えはM6にある逆光時のハレ(ただしこのハレは比較的簡単に防止できる−これは後日M6の解説で述べる)も少なく、CLEと同レベルと云えよう。評論家が書いているとおり距離計窓の縁でもピント合わせが可能で、M6から移ってもさほどの違和感はないだろう。ファインダー全体の見えはM6より多少暗いがまずは良好。しかし無理にワイドにしたからか歪曲(タル型)はやや大きく、周辺に非点収差が残っているようであり(私は強度の乱視=非点収差が大きいので良く分かる)、光軸から目を少しずらすと甘い像になる。この点アサヒカメラではファィンダーレンズのイメージサークルの不足を原因にあげていたが、その点は私には分からない。M6は勿論、似たような倍率のCLEより周辺部は劣ると思われる。それと28mmのフレームの左側の境が簡単な表示になっていてどうも左のフレーミングに不安を感じる。どうせ正確なフレームではないとは云え、もうすこしくっきりと視野を囲って欲しかった。

4. 露出の制御は標準的なテストの結果、ややアンダーになるが問題は少ない。これを問題にする人は1/3程度オーバー側に補正することである。そしてDX対応しているのも当然の事とはいえ妥当な事である。人によってはこの機能があっても、いちいちフィルムを替えるたびにマニュアルで感度設定をし直すのをみるが、間違いは誰にもあることで、リスクの回避のために自動的に設定し、あとは露出補正で対応するのが良いと思う。例外は実効感度が公称値より低い場合(高いと云うのは聞いたことがない)あらかじめ低くセットしておくのが良いだろう。ともあれ、あらゆる条件でテストしてきたが、このカメラの露出制御の機能・正確性は充分である。反射式の測光であるから安定した動きさえすれば露出のレベルは慣れが肝要である。M5.M6のスポットに近い測光、CLEの平均測光、ヘキサーの中央部重点測光と各々異なっていて面白い。機能的に見るとこの部分に各社の独自性が出ていることが良く分かる。AEにはヘキサーの方式がAEロックができる事もあいまって良いだろう。マニュアルだとどの方式も一長一短がありどうとも云えない。一眼レフに一般化した評価測光が不可能なRF機は今後も露出制御方式に試行錯誤があるだろう。個人的にはライカ方式(ライカではセレクティブ測光と云っているらしい=実に当を得た言い方である)にAEロック(2002年M7で実現した)というのが使いやすいと思う。それにしても露出のことも含め、CLEは20年近くも前によく高いレベルに達していたと思え感心する。

5. モーターの巻き上げ、巻き戻しは今日当然のことと思われる。手動もあって良いが私の写真の現場では(たとえば冬の日本海)正確に作動するなら自動であることに賛成である。モーターの作動が遅いと云う人もいるが、小型化と静粛性を考えるとこれで充分、申し分ないと云えよう。モーター仕掛けやバッテリーのあがりに不安を感じる人はサブボディにM6を持てばよい(私は散歩カメラとして使う時以外は必ずそうするだろう)。フィルム装填の自動化も当然の事と思う。雨が降ったり、埃っぽかったりの悪い条件下でのライカのフィルム装填はリスクを通り越してストレスを感じる事すらある。勿論、普通の撮影ではライカの儀式も捨てがたい...矛盾した事だが。とは云ってもヘキサーに非常用の手動の巻き上げ巻き戻しの装置をつけたり、マニュアルシャッターをつけたりするのには反対を唱える。多機能となりコスト高、複雑な機構、なにより大型化したRFを想像(例えばニコンF4やコンタックスRTSV)するとおぞましい。これは誰でも了解できるだろう。必要最低限の機能で充分なのである。この基準がライカとコニカで違っているだけである(勿論、両者の営業的な戦略はおおいに関係している)。

6. バックドアも5と同じ理由で良好。ボディ強度とフィルムの平面性の保持に大きく関係するので大切なパーツであるが、フィルムの入れ替え時のリスクを考えるとライカMよりヘキサーが良いと思う。ドアの建て付けを見るために試しに閉めたドアを上から押しても不安な要素はない。確実性と強度という点ではライカMにもまだ頼らねばならないだろうが...。5と6のテーマは撮影のリスクと機材のリスクを天秤にかけて良く考えねばならないことである。M6はバッテリーがなくても動くのである!やはり両方持とう。

7. 評論家の論にもあったが、トリエルマーの焦点距離の変更時にファインダーのフレームの切り替えが一部ついていかない(28から50に切り替えるときフレームが変わりにくい…本の記述と同じなので製品による誤差ではなく、最初からの問題であろう)し、ファィンダーのセレクターレバーを動かしてフレームを切り替えるときもM6のようにすぱっと行かないこともあった。どちらにせよ撮影結果には影響がないことは云うまでもない。弁護する訳ではないが、長い時の経過があり、ライカの純正品でもマウントのレンズ側とボディ側のサイズ(或いは精度)にずれがあり、レンズによって付かないボディがあったり、少しガタがあつたり、取り付けが固かったり緩かったりすることは良くある事で、問題という程ではない。

8. 次は役に立つ話。測光の方式だけでなく、露出計のセンサーの位置や角度がM6、CLE、ヘキサーで異なりヘキサーがセンサーの取り付けの角度も浅く、測光の方式も関係して後端の突出したレンズでもTTLが可能となったことである。つまりレンズの後端がセンサーとダイレクト測光用のシャッター幕の反射部の光路を遮ることになり露出計が反応しなかったり、不正確な値となったりするのが少しはましになったと云うことである。これはレンジファインダーTTLの宿命的な事で、ヘキサーは見えにくい所であるが良く対策していると思う。スーパーアングロンでは無理なようだが、ジュピター35mm、Gビオゴン改28mmLはその後端の突出により、M6.CLEでは測光が難しかったが、ヘキサーはよく動く。少し光路がケラレるようだが、1/3程度の補正で正確に連動する。外部露出計で測るのも悪くないが、やはりTTLで迅速に測光する方が合理的だろう。それに前にも書いたが、特に古いものや非純正のレンズではF値は同じでも実透過光量(Tナンバー)が小さいものが存在し、TTL測光が望ましい。理屈だけならM5.CL方式が良いと思うが機械式の不安定さとシャッターレリーズのタイムラグ、やはり後部突出のレンズの対応ができない点など無理があり、その後のカメラで放棄された事には納得できる。


9. この度新発売された「フジ・トレビ100」のテストも兼ねて、まず一本撮ってみた。レンズはGビオゴン改Lマウント28mmF2.8(1999)、キャノン28mmf2.8(1957)、エルマリート90mmF2.8(1999)、ジュピター35mmF2.8(1979)、ズマロン35mmF3.5L(1950)、キャノン35mmF3.2(1951)である。ファインダー倍率の事もあり、ワイド系中心の使い方が妥当だろう。色々なレンズを使って見たのは相性とは関係ない。ボディの使い勝手を試すために色々なタイプのレンズをフィールドで使ってみたのである。結果はやはり机上での使用感と変わらずそれほどの違和感はない。軽いレンズを使うと上を向く欠点もぶら下げている時の事で、撮影にかかるとたいして気にはならない。しかしホールド感は巻いてあるゴムの粘りを感じ、あまり良くない。これは部屋の中で触っているだけなら悪くないと感じるが、使っていると煩わしいような重さを感じさせる。滑り止めの効果は絶大だと思うが、サラッとした軽い触り心地(洗い晒しの木綿のシャツのような)が冷たく頑丈なカメラには合っているように思う。私のカメラの持ち方はしっかりとしたストラップ(いつも古くなると交換する)を首に架け、上記のとおり完全にホールディングし、教科書的に撮影する。それが学校で教授、先輩に教えられた大切なことと思え、今でも守っている。おかげで30年間近くカメラを落としたことは一度もない。そんな意味でヘキサーのまとわりつくようなグリップ感は好きになれない。ライカMが勝ちである。ただし一般化はできない。好みの問題だろう。あとはテスト時に気になったファィンダーの枠の反射もだんだん慣れて気にならなくなる。勿論、M6に持ち替えると別の画面のようになり、眼が良くなったのかと(私は近視の乱視で眼鏡を着用)感じるほどの差がある。今回はあえてほとんど露出補正をせずAEのみで撮ってみた。結果は90%はほぼ正しい値になるようだが、やはり中央部重点測光とはいえ、ライカ程ではないが、いわば大きな中央部のスポット測光のようでハイライトとシャドゥの差はくっきりと出る。測光範囲が明示されている訳ではない(改めて大まかにせよレンズによる測光範囲の表示されるM5は便利である=ライカの測光はスポットメーターと同じく重点被写体に画面中心を向け、反射率も考慮し測光−補正を行い、カメラを振ってフレーミングする。或いはその逆の手順となる)ので明度差が大きな状況では補正やAELが必要である。ロック機構が付いているのは必然的な選択であったと言えよう。ライカもセレクティブ測光を堅持すると明言している以上、AE化するならAEロックは不可欠な装備である。「アサヒカメラ」の記事によると露出の値はややアンダー方向に振れているように書いていたが、これは本当である。リバーサルを使う分には問題ない(と云っても実効感度のやや低いKR64やEPRなどや人物撮影だと問題あり)が、一般論としては1/3程度の補正はした方が良いと思う。各コマを観察すると四隅に少しRが付いている事と、画面の左上1/3位の所にフィルム外側に向けて凸部(どうしたものかフジTX−1にもある)があり、何の意味があるのか分からないが、どうせこの部分はトリミングされるとは言えハッセルみたいで面白い。ヘキサーはメーターの設定、CLEは平均測光であるため空からの光に反応し、どちらもややアンダー気味となるが本質的な正確さの差は感じられない。まずどちらも信頼できると言えよう。昔はこの程度のAEでも大感激だったが、昨今は分割測光や評価測光の登場〜完成により、ほとんど無感覚に撮っても98%位適正になるのは驚きである。私もEOS−1やT90で撮っていた時は全くと云って良いほど気を使わなかった。ヘキサーの良い点も欠点もプロ−アマ、ベテラン−初心者、ユーザー−コレクターなどの対局の存在のどちらを狙ったのか、部分部分は良いとして全体としての方向がはっきりしない点だろう。この例の左方はライカMが良く、右方はG2が良いと考える。悪く云えば中途半端、良く云えばみんなに良いカメラとなる。私は好きだが…。今の私の率直な希望を云えばヘキサーのファィンダー倍率をM6並に上げ内面の反射を改善し、貼り革をM6のような物にし(TX−1やG2のような金属むき出しは感心しない)、上面右のダイヤル、スイッチ類を少し改善する...。たったこの程度で格段に品質感が上がること受けあいである。

*テスト結果の追加 − レンズテストの時、同じレンズを絞り優先でF5.6-8-11と連続して撮ると、絞りが開いたとき、つまりシャッター速度の速いとき、ほんの少しだが画面が明るくなる。3本同じように撮っても同じ結果である。晴れた日の野外での撮影なので1/1000-1/2000の速度である。つまり絞り込みシャッター幕ダイレクト測光AEであるため、相対的に高速が遅いか、低速が早いかのどちらかである。1/500以下ではこの現象がでないので前者であろう。昔のメカニカルシャッターの時代ならいざ知らず、現代の精度でこのようなことがおこるはずはなく、おそらくそういう設定なのであろう。勿論、僅かな差であって実用上何の問題もないことは言うまでもない。

今回は感じたまま色々な事を書いてみたが、コニカの冒険には敬意を表する。ライカブームと云っても国産の限定版のレンズ2−3000本が、それも世界で売り切る限界で、ライカM6ですら月産1200−1300台というのが現状なのである。ライカの売り上げのかなりの部分は、中古品がしだいに値段をあげつつ市場でぐるぐる回っている事によるものであるのだろう。そのような現状で開発費も含め16万円台で出せたことに値打ちを感じる。別の稿でも書いたが中古品が出回っているだけではメーカーは一向に儲からず、開発の予算も意欲もなくなるのである。フォクトレンダー=コシナの一連のレンズの開発もそうだが、より安い値段でライカを越えたとは云えないまでも、少なくとも並んだと言える製品の開発には将来のカメラの姿さえ予感させるものがある。つまり単なるクラシック趣味ではなく、内容を伴っているのである。M6TTLの実勢価格が20万円前後であることを思えばヘキサーの値段は上限と云えよう。これほど過熱した市場であるのに最初から20%引きで売るのも理解できる。ライカファンの多くをしめる人々は16万なら少しお金を足してM6TTLを、あるいは16万で程度の良いM6の中古を買うことになるのだから…。いよいよ今年は(2000年)春にフォクトレンダー ベッサR(\68000)が出るようだし、レンズ、そしてボディもこの2社も含め充実してくるようなので期待しよう。まさかライカM7がヘキサー改のOEMで発売されるとか、ベッサRも次にMマウントのものが出るという話があったり、ニコンS3の限定復刻モデルが出るとか、安原二式が出るとか噂はしきりである。ヘキサーRFはちょっと触っただけでも改良の余地がかなり残され、不完全と云ってしまえばそれまでだが、今後育っていく可能性を持っているカメラである事が噂にもつながっているのだろう。実は皆が理想のライカRF機と考えていた機械がヘキサーで実現されたのだ。これを素直に評価しよう。私はレンズも全て買うつもりである。これらの評価(より具体的には営業的成功)がヘキサーの改良につながり、M3の時のようにライカ社をも動かすきっかけとなる。独占していれば新規の開発も滞り、しだいに技術力も低下することはどの業界でも同じ事である。私は国産品はすでにレンズの性能では従来のライカを越えたと見ている。対してライカでは非球面化とAPOレンズのラインアップをほぼ終え、値段が高くともそれに見合う高性能を打ち出している。カメラ人口全体から見ればコップの中の嵐にすぎないかも知れないが、革命的なライカが出てくる可能性も高い。私には今年もライカブギウギーが楽しみである。

追補:1  ファインダーの見えの悪さを指摘したが、不思議に慣れると平気になり、良さが浮かんで見えてくる。良さとは「露出・フィルム給送の自動化」であることは言うまでもない。距離計のシャープさが足りなかったが、これは距離計像の上下の僅かなズレであることが分かり、調整でピックリするほどクリアになった。

追補:2  最初期モデルであるせいか、コマ間が不安定(ただし実用の範囲内)である。また最後のカットが巻き上がるときに最後の数ミリで、もうワンカット巻き上がるタイミングになると、フィルムがずれて巻き上がり、結果として少し隣のカットと重なってしまう。たいした問題ではないとも言えるし、精密機械の仕上げとしてはお粗末とも言えよう。今のモデルでは改良されているのだろうか?ただしコニカに調整に出したら完璧に直した。技術力と責任感は高く評価できる。また現行品では改良されてこのようなことはない。更に少し手振れの原因となっていたシャッターボタンの遊びも(私はそれ程気にならなかったが)改良されているようだ...これ以外にもおそらく改良は各部にわたっているのだろう。

追補:3 色々苦言を呈したが、この文章を最初に書いて、はや12ヶ月(2000/12)。この間一番シャッターを切ったカメラは予想通りヘキサーRFとなった。特にルポルタージュ(何とクラシックな響きだろう!)には最も優れている。自動化以外にシンクロの1/125もおおいに役に立つ。私は学術写真を撮るとき、少し暗くなるとシンクロさせて確実性を上げる。民俗・地理学の現場では一回性が高く、「フォトジェニックな...」と云っている暇のないことも多いのである。当然それだけではないが、フィールド派にはヘキサーRFとトリエルマーの組み合わせ、あるいはヘキサノンKMレンズ4本組がお勧めの選択とも付け加えておく。純正レンズのテストは後日。

左から35/90/50/28の各レンズ、いずれもフード使用状態。現代のレンズは逆光に強くなったが、やはりフードは撮影時なるべく使おう。

追補:4 美しいがずいぶん大きくなった35mmF2レンズ。私は前の限定版の初代ヘキサーの35mmF2のLマウントレンズで充分だと思うのだが...レンズ構成が複雑になり長くなるのだろう。ヘキサノンKMレンズも50.90はコンパクトだが28mmでかなり大きくなり、35mmで更に大きくなった。性能はともかくとして携行に不便になったことは事実である。フィールドワークでは重量より大きさが問題である。ヘキサノン28.35mmを持つなら他のレンズだと3本持て、事実その通りになるだろう。KM28mmは非常に良い性能だが、いざ野外調査ではGR28かG28になることが多い(エルマリート28mmも同じ理由であまり使わない)。

追補:5 コニカ50mmレンズ2本。限定2.4レンズは絞りによってやや神経質な変化を見せる描写で、KMレンズは本当に優等生的なレンズである−個性がないのが個性と云えようか。

KM50mmは現行ズミクロンと変わらない高性能を持っている。限定ヘキサノンレンズはこれも含めて全体に価格の割にはさえない(総合的な性能)=その中では60mmが最も安定的である。KMレンズはどれも言うことはない高性能である(すべて球面レンズで作られているためか、絞りによる変化が少ない)。

追補:6 1年使い込んだ(2000/12)。予想通りこの1年最も多くシャッターを切ることになった。距離計とフィルム送りの調整に出しただけで、問題はまったくと言っていいほどなかった。海水をかぶったが何ともなく、はからずも防滴性能の良さも分かった...距離計調整前だったのでついでに見てもらっている。これはファインダーの密閉性にも云えることで、埃の類はほぼシャットアウトされている。コニカ自慢のボディ内外の強度も抜群で、私の予想と反して傷ひとつ付いていない(私はケースは撮影中も移動中も着けない)。頼りなく見えた各可動部も破綻なく、びくともしない。最終的にはファインダーの「見え」だけがM6より劣るのみと評価される。結局は当初多少批判的だった人達(私も含む)も「CLE」同様、ライカ以外のライカカメラとして受け入れたと思われる。まさに「勝負あり!」である。ただし問題点が無いわけではない。コニカも繰り返し言っていることだが、主としてライカMボディ・レンズとヘキサーボディ・レンズの相互乗り入れのインターフェイスが完全ではないことである。これはあちこちから聞こえてくる。私の場合で言うとトリエルマーをヘキサーに着けたときに無限遠が僅かにズレる。誤差の許容範囲内で特に問題とならないが(開放でもF4)Mボディではピッタリあうため気が付いた。このズレがもう少し大きいか、開放値が明るいか、長焦点なら影響があるかも知れない。気を付けることである。ヘキサーには誤差がないかも知れないが、ライカには個体差が存在する。

追補:7 2001/3、ひとつ問題を発見した。ボディ外装の黒メッキの強度が高いことは既に記述した。が、バックドアの黒マットペイントは被覆が弱く、よく触る右上と左下に剥がれが出始めた。地は軽金属の銀色である。しかもすり減るという感じではなく、プツプツと浮いてくるような剥がれかたである。

追補:8 ヘキサーのピント調整機能について海外でも少し問題となっているようである。ひとつにフランジバックがライカと微妙に異なり、その点の議論がなされているようである。フランス在住の私のサイトの読者の方から寄せられた情報で、http://www.imx.nl/photosite/Topics/start.htmlがある。かなり深刻かつ根の深い問題で注目する必要がある。

追補:9 2001/10、2度目の距離計の調整に出したら、単なる調整にとどまらず、もう少し大きな整備になったようである。トリエルマーその他のライカレンズと距離計像上で無限遠が合わなかったのだが、その他の手持ちのレンズも含めて合うようになった。たぶん距離計のアームやコロ、伝達用のカムその他の機構が改良されたのだろう(結局コロから距離計への運動の伝達に多少の不一致があったと推定される)。と云うのも今まで合っていたレンズも合うし、微妙にずれていたレンズも合うのである。ここらへんの情報は後日の話としたい。

追補:10 今日(2002.1.19)面白い経験をした。テスト用に100ftの長巻からモノクロフィルムを店で売っている空のパトローネに巻き込んでヘキサーに入れたのだが巻上がらない...すわ故障と思ったが違う。パトローネそのものを認識しないのである。DXコードの入っていないパトローネだったための椿事であった。DXコードの入っていない、あるいは何らかの事情で消えたり、テープ等で隠したりしたものはその存在を無視し、ただ空シャッターを切るのみである。私はほとんどこのようなパトローネを使わないが、使う人は要注意。

追補:11 ライカM7の発表があったからだろうか、ヘキサノンKMレンズが値段をまた下げた。ボディもどちらかと言うと下がり気味である。残念ながら人気のないヘキサーRF/KMレンズ群は実力充分であり、ある意味では買い頃とも思われる。

追補:12 フィルムのオートローディングが悪くなり、フィルムがスリップして時々巻上がらない(2002年)。ただしフィルムカウンターに「0」が点滅するので空巻き上げの失敗とはならない。ファインダーの2度の調整に続いて巻き上げ軸か押さえのローラーの調整が必要になってきたようである。数多く撮るとはいえ、ボディの価格を考えると度重なる小さなトラブルは「ご愛敬」とは云っていられないだろう。

追補:13 本意ではないが2台目のヘキサーRFを購入した。ホロゴンT*16mmF8L改のボディとのマッチングをはかるため、ボディごと預けたのだが(マウント改造には時間がかかる)、急な仕事が入り購入とあいなったのである(仕事にはかかせないカメラだから)。性能は当然に安定しているが、36枚巻き上げていくと後の方がコマ間が詰まっていく・・・1台目もコマ間の狭広があったし、友人のボディもそういう傾向である。おかしな事に全体としてコマ間が狭いために1枚多く撮れるようになった・・・最新技術としては原始的な「得」をさせてくれる。今回はそんな訳で今のところ調整に出していない。このボディは新品同様のまま最近友人に譲った(2006.8)。

2002.12

追補:14 コニカとミノルタが合併するようだが、このカメラは当分生き残るだろう(しかし残念ながらどうやら終焉を迎えそうである-2004/7/19)。そしてミノルタの持っているライカとの技術提携のノウハウ/データが生かされることを期待したい。もう何百本も撮っているが、ますます快調である(メンテナンスはやはり必要)。先日読者から防滴性についての質問があったが、上記にもあるとおり、かなり高性能である...電気カメラだが雨に濡れても、海水を被っても正確に作動した(勿論テストは厳禁)。2003.8 

トップの写真はヘキサーRFとKMレンズ群。左から50mmF2、28mmF2.8、35mmF2、90mmF2.8。どれもフードまで仕上げは良好。50・90mmはコンパクトだが、28・35mmはかなり大ぶりである。

ヘキサーRF+ヘキサノン60mmF1.2限定レンズ。重量感がある。個人的には現行ノクチルックスよりこちらのデザインの方が好みである(フードは大袈裟すぎる=薄暗いところでしか撮らないのでフードはあまり必要でない)。

キヤノン25mmF3.5を取り付けた。ヘキサーのファインダーは大きくて、フルフレームでだいたい25mmの画角と一致する(便利なので24-25mmレンズの使用頻度は多い)。

ヘキサーRFリミテッド、2001年春の発売。残念ながら商業的には成功しなかったようで、2003年末には50mmF1.2とのセットで20-25万円となってしまった。これもコニカ/ミノルタの合併劇と関係あるのか「処分」以外の何ものでもない。私はビッグミニ・リミテッドと共に友人と共同で購入し、自身はボディを取った(レンズは友人)。大事に使いたい...もうコニカ(そして銀塩RFも)に会えないかも知れない。3台目のヘキサーRFであった。レンズはsummaron35mmF2.8。とても美しいカメラだと思う。

限定ヘキサノン21-35mmとRF。このレンズをテストしたら、やはり多少の無理があるらしく他のヘキサノンとは異なり「優等生」ではなかった。F8まで絞らないと全面にピントが来ない(当然厳密な意味で)。うんと安くなってきたが(11万円程度)あまり勧められないレンズである。2焦点と言っても外付けファインダーと内蔵ファインダーを見なければならなくて、便利性より少しく煩わしい。ただし仕上げ・作りはたいへん良い。

ズマロン35mmF3.5と。こういう使い方も可能である。かなりMライカの基準に準拠していることが分かる。

この組み合わせで一番多くシャッターを切る...ヘキサーRFは黒と白の両方を使う。ともかく28mmを使うときはヘキサーがほとんどである。

エルマリート28mmF2.8/2ndと。

ヘキサノン28mmF2.8と。フードが大袈裟すぎる=このレンズは逆光性能がいいので、もう少しコンパクトなフードの方がいい。外品のフードも「格好つけた」大袈裟フードで、見栄えはするがフィールドでは現実的でない。

色々なレンズをつけた姿を出している=これは珍しいタナー50mmF1.8で直線的なヘキサーのデザインとマッチしている。そろそろヘキサーの挑戦も終わりを迎えつつあるようだ。コシナ・ベッサと共に、銀塩カメラの終焉まで生き残ったレンジファインダー「ライカ」と運命を共にすることになるだろう。勿論ライカはそれ以降も実用を越えても残るだろうが(それともいつまでも実用として使えるのか?)、私もそろそろデジタル一眼レフでないと難しい仕事が増えそうである(現状でも「押さえで銀塩」が実情だ)。それでも意地でライカを使い続けたい。ライカブームのころ「普段はライカで仕事を・・・」と云うと、皆「えーライカでですか?」と驚いたものだが、今は「いいですねー。羨ましいですよ」と云われるようになった。以前は仕事カメラはF5やRTS−III、せいぜいEOS-1だったのが、デジタルに完全に移行(あるいはその前夜)したためなのだろうか。

M4−2に50mmKMレンズ。横の現行ズミクロンに似ているが、やや寸胴であか抜けないように感じられる。しかし性能も含めて実際の使用では何ら劣ってはいない。なぜか市場ではKMレンズの人気が薄く不思議に感じる=例のボディ/レンズ間の距離計連動の不整合への不安があるのだろうか?

参考資料
「アサヒカメラ」 1999/11-12 2000/1(特に「ライカ社へ聞く100の質問」は細かく読むと、ライカの歴史を知る人には暗示的な内容を含んでいる)
「カメラジャーナル」 田中長徳 1999/12-2000/1
「写真工業」 1999/11
「ライカ物語」中川一夫著 朝日ソノラマ
「ライカとその時代」酒井修一著 朝日新聞社
k-repair .... http://www.k-repair.net」

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