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Vivitar 27mm

あなどれないオモチャカメラ

今回は「オモカメワールド」相互リンク記念で、私の持っている唯一のオモチャカメラの簡単な説明とする。
1998年のある日、ファッションカメラマンの友人が妙なカメラをもって来た。大阪鶴橋のディスカウントストアー(と云うよりいわゆる「バッタ屋」)で売っていて、珍しいので2台買ってきたとのことである。新品で1300円(!!!)だったと記憶している。箱はなくビニールの袋に入っていて、説明書もワープロ打ちの国内業者の作ったモノである。勿論テクニカルデータは何も分からない。カメラだけが手がかりである。カメラ名は特にない。カメラ底部に Vivitar USA と小さく書いてあり、アメリカ物だと分かる。そして友人が気に入った理由として Vivitar 27mm Wide Angle Lens とレンズの回りに印刷されている。27mmレンズ付きなのである。写真にもあるとおり、必然性はないもののスケルトン仕様で、しかも使い捨てカメラではない。アメリカデザインらしい色使いでスケルトンボディの中に部品が配置されている。外から見たデザインは良好である。では撮影してみよう。
 ボディ左側(撮影者側から見て。今後は左右の表記はこのとおりとする)にオレンジ色の爪があり、下に押し下げると簡単に黒い(当然だが)裏蓋が開く。フィルム室は当然に黒のプラスチックであり、漏光は一切なかったことも付け加えておく。普通のコンパクトカメラと同じく35mmフィルムを入れる。そしてフィルムのパーフォレーションを送りギア(画面の上部・中心にある)に噛ませて巻き取りスプールに置き、フィルム先端を黄色のマークに合わせる。つまりイージーローディングなのである!フィルム送りは巻き取りスプールで行うが、シャッターチャージとフィルムの位置決めはギアで行っている。イージーローディングの性能もフィルムのコマ間隔も問題なく、どう見ても簡単な作りであるのに不思議な気分である。現代の技術をもってすれば容易なことなのだろう。ロシアンカメラへの不安と闘っている自分が可笑しくなったりもする。以前に使い捨てカメラも使ったことがあるが、やはり同じ感慨を持った。
 さて裏蓋を閉めて空シャッターを2枚切ると準備OK。フィルム巻き上げは裏蓋右上に黄色のギアがあり、動きは意外な位軽い。フィルムカウンターは(ボディ上部の黄色のギアである)自動復元式(!)の順算式でSから始まり、1・3・6・・・と数字の表示は簡単にしている。さてシャッターボタンは紫色でスケルトンのため動きが分かって面白い。ただしシャッターにもロックがかかっていて誤作動を防止している。レンズの下にレンズの蓋の開閉レバーが付いていて、これをスライドさせてレンズを開けないとシャッターが切れないようになっている。写真では半開きにしてある。
 ボディ前面左に紫色のノブが付いていて、これはストロボのスイッチである。暗いところで自動で光るところまではできないが、少し前のコンパクトカメラの水準である。ストロボのチャージが完了すると裏蓋のファインダー窓の左にある赤色ダイオードが点灯する。
 ファインダーを覗くとシンプルそのもので何の表示もない。フルフレームが27mmである。シャッターを切ると固定レンズシャッター(たぶん1/60)であることが分かる。他ではスケルトンボディの欠点は分からないが、ストロボを発光させてみると唯一問題があることに気が付く。フィルム室のみ光から守られているのであって、ストロボを発光させるとボディ全体に光が回り、当然にファインダーも一瞬真っ白になってしまう。私は知人の結婚式でこれを初めて使ったのだが、暗い式場で自身のストロボの光に眩惑されてしばらく目が見えにくくなってしまった。レンズが暗い分(おそらくF11程度)、なかなか強力なストロボである。
 さてレンズであるがシャッターを挟んで一枚ずつの2群2枚構成である。凸レンズを対称に配したトポゴンタイプであろう。ピント装置はない。絞りもなく、パンフォーカス効果とトポゴンタイプの欠点である周辺光量の極端な低下への対策だろうが、丸いリングでF11位に光を規制してある。
 ISOの調節も露光の調整もないため晴れた日は露出オーバーになる。晴れた日の屋外ではISO100のフィルムとし、暗い日はそれより感度の高いフィルムを選択することである。あとはフィルムのラチチュードに頼る他はない。しかもパンフォーカスといっても遠距離のピントは甘い。当然ながら近距離にピントの中心を置いているのだろう。しかし屋内での撮影では結構まともに写る。比較的近距離なのと暗いためストロボの出番となり、2m前後なら露出・ピントともにピッタリである。L判程度なら何ら遜色はなく、使い捨てカメラやAPSよりは綺麗に写る。しかも27mmのワイドである。最初に結婚式のスナップに使ったのは正解であった。そして今回はカメラの性質上細かな画質云々は議論しない。
 注意点。フィルムが終わると巻き戻しである。これは普通の巻き戻しクランクが付いていて操作上は矛盾がないが、フィルムの送りギアにロック(ハブ)がなく逆転もするため、撮影中誤って巻き戻しクランクを回してしまうと巻き戻ってしまい、二重撮影の危険性があることである。
 オモチャカメラと云っても機構自体は一昔前の国産コンパクトカメラのものを備えており、写りも使い捨てカメラよりはやや良く、しかも27mmワイドレンズつきである。スケルトン仕様の珍しさやストロボ発光時のスリルなど個性的で、結構魅力的なカメラに見えるのだがどうだろう。

案外綺麗に写る。亀岡トライアルランドにて。

少し綺麗に写真を撮り直した。久しぶりに取り出して空シャッター(これはメカニカルシャッター)を切ってみる。フィルム送りも含めて完全に作動した。オモチャとは言え機械は正直に動く。
 
                                            nagy

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