今回は手軽なMマウントボディとして最近発売された「コシナ=フォクトレンダー・ベッサR2」を概観してみよう。 基本的な取り扱い/仕様は各雑誌に書かれているので詳しくは書かないが、とりあえず使ってみた印象を述べてみる。 さて話を戻そう。更に外から眺めてみる。まず「BESSA R2」の書体がR2の部分だけ異なっている。今まではBESSAとRが同じ書体だったのだが、今度はR2だけが少し細めの書体になっている。これも悪くない。どうでもいいような事だがデザインは大切だと思う。そして字のペイントも下地が変わったからだろうが、より厚塗りになっている。次にレンズマウント部のエプロンが変わった。Mレンズ用のロックボタンとカラーが追加されたことは当然だが、マウント径が大きくなったためエプロン部が上のトップカバーに丸くはみだしたことである。細かなことになるが、レンズのピントレバーの逃げの部分が長くなった。これは例えばニッコール35mmF2.5L(私の所有レンズではこれのみ)などピントレバーの位置がマウント寄りの場合Rの逃げでは足りないことがあったことへの改良であろう。ボディ前面ではあとセルフタイマーが省略された。不必要・コストダウンの両方が理由だろう。 さてそろそろ使ってみよう。まず巻き戻しクランクを上に持ち上げて引くと裏蓋がポンと開く。何のロックもなく少し不安に感じるかも知れないが、クランクが奥に畳まれているため問題はないだろう。フィルムを装填するのもベーシックな仕組みで何一つ分かりにくいことはない。巻き上げ軸のスリットにフィルム先端を差し込み、フィルムを巻き上げ送りギアにパーフォレーションを噛ませ、蓋を閉める。巻き戻しクランクでフィルムの弛みをとり、2カット空シャッター、この時巻き戻しクランクにある赤玉が回るのを確認して完了。迷いはないが、この時代ヘキサーまでとは云わないが、せめてライカぐらいのクイックローディングシステムが導入できないものかと思ってしまう。なぜなら初心者に多い空撮りのリスクは改善されておらず、多少のコストで安全を買いたい人も多いのである。これは昔のキャノネット以来完全に定着したことなのである。 大きく変わったのが測光である。Rではシャッターチャージしてもしなくても、シャッター半押しで電源が入り、発光ダイオードが+・−と点灯し、真ん中の赤丸が点くと適正となる。約10秒(実測)点灯する。シャッターを切っても10秒間は点きっぱなしで何となく間が抜けていると感じていた。R2ではここが改善され、普通のカメラのようにシャッターチャージ時(つまりフィルム巻き上げ後)のみシャッターボタン半押しで電源が入り、露出を合わせシャッターを切ると消灯するようになった。その代わり点灯時間は15秒/実測となった。いずれも健全な改良として受け止めている。勿論「進化した」と云うほどではない。普通のカメラでは当然のことなのだから、ベッサもOEM用一眼レフボディのチープな改造版をようやく脱したと言えよう。 さて距離を合わせる。これはRと同じで極めて高い品質である。人からは「距離計像がずれる」と耐久性についての指摘がされたが、Rも含めて私はそれを特に感じていない。しかし使用頻度が低いので本当のところは何とも言えない。確かに最近の国産RF機のヘキサーRF−フジTX−1ともに距離計像のずれが出て調整が必要であった。R2はたくさん使ってみて結論を出そう。しかし前記国産2機種より距離計自体は断然いい。ちょっと暗めだが、ファインダー像全体の見え方、距離計像の分離と合致、フレームの綺麗さなどM6よりいいと感じることすらある。あとはライカの0.72ファインダーと同じで目玉をグルグル回さねばならないが「28ミリ」のフレームは出るようにして欲しい。望遠側は90mmで充分だが広角は35mmまででは不足である。公式には別としてライカ型のRF機ではワイド中心の使い方が主となるので、35mmを中心とした焦点距離の振り分けとなり、どうしても28mmは必要だと考えられる。 多少の問題点を残しつつ撮影を終える。フィルムの巻き戻しも古くから使われてきた方法である。底蓋のロックボタンを押し、巻き戻しクランクを引き出し時計回りに巻き戻す。クランクが小さく回しにくさもあるが、これも些細なことである。動きが軽くなったらお終い。最初に戻る。 ベッサRと違い、Mマウント/改良されたボディにより、このカメラは多く使いたい。耐久性も試されるが、ようやくヘキサーに迫ってきたようだ(勿論「まだ」である)。ヘキサー/コニカのいき方とは異なるアプローチで、ライカを越えようとしているコシナにとってはひとつの分岐点と感じられる。おそらく次はAE機構とモーター付加だろうが、それでヘキサーに追いついたときには現在のレンズ/アクセサリー、何よりノウハウの蓄積がものを云い、商売としても成功するであろう。依然としてライカイーターはコシナだろう。タムロンがブロニカを併合したように、ライカだけではなくOEMメーカーが得意先であるカメラメーカーを食うことが可能かどうか、何でも起こりうる時代、関心はつきることがない。 R2とR、表面処理のおかげで光が乱反射し、R2が少しグレイっぽく見える。 最後にMマウントの問題を考えてみる。特許は切れているものの、ライカもマウントの図面を公開しているわけではない。コニカはうまく作ったが、オリジナルとは多少のズレがあるようで些末な問題も生じている。ミノルタやコシナは正式に提携したためノウハウを得ているのだろう。カタログにもはっきりと「Mマウントレンズ対応」と謳っている。コニカの「動作保証はしない」のとは対照的である。今後の展開は興味深い。ライカのOEMを引き受け、かつライバルにもなる。不思議な関係である。おそらくボディはM、レンズはLという二重構造はそこら辺から決められたことなのだろう。とは言えベッサTで取りつかないレンズが存在したり、無理につけるとシャッターを壊してしまったり(私の友人もホロゴンM改を着けて壊してしまった)それらのアナウンス不足が露呈したり、相応の不備はあった。今回はマウントの内側を広げて取りつけられるレンズの範囲を拡大した。ズミクロン35/7枚玉・ズミルックス35/球面である。しかしまだ以下のレンズが取りつけ不能なので要注意(ボディを壊す可能性があるので)である。 ホロゴン15mmF8 スーパーアングロン21mmF4/3.4 エルマリート28mmF2.8/1st DRズミクロン50mmF2 以上は公式な発表 これらに加えてLマウントレンズも後部の突出したものや特殊な構造のものは無理である。 積んでみた。やはりR2はグレイに見える。滑面のRは真っ黒だ。レンズはRはカラースコパー50mmF2.5、R2はカラースコパー35mmF2.5+LH−2フード。小さなレンズに憧れがある。 *今後もう少し使い込んで改訂していきたい。どうしたものかこのボディを好んでいる。 *追補1/山陰旅行に持っていった。理由は冬の山陰は雪や時雨が多く、ヘキサーやM7などの電気カメラは持って行きにくかったこと、今回はボディ1台レンズ1本での撮影のためと、雪の中でMライカのフィルム交換がリスクが大きいため、「新しいカメラ」なので信頼性が(シャッターや露出計)あるため等であった。昔からの「ごく普通のカメラ」の使い勝手で、実際にフィールドで使うとその感が強い。少し安物っぽい操作感も色々な操作系の適切な配置と共に違和感がまるでない。唯一気に入らなかった「ペシャン!」と言うシャッター音も風が吹き波の立つ野外調査では何一つ耳障りではない。部屋で触るのとは違った使用感である...もう少し野外へ持ち出したい。 ただ一つ問題点はメーターがcds並の応答の遅さである。シャッターボタン半押しの最初の反応は早いのだが、そこから絞りを変えてもスパッと発光ダイオードの光が左右に動かない。寒さが関係あるのかも知れないが(これは今度実験する)反応に不安を感じた。しかし実際の現像の上がりを見ると適正である...もちろん慎重に測光したのである。たぶん気軽にポンポンとメーターどおり撮っていたら少しバラツキが出そうな気がする。 やはりマニュアルの露出計はライカM6が数段上と言えそうである。それとカラースコパー35mmは案外逆光に弱かったこと...フレアは薄く全体に出るためあまり普段は感じないが、雪中ではハッキリと分かる。これがフレアだけでなく画質の低下をどうしても伴うのである。今後は着いている短いフードではなく、上の置き撮り写真のように深いメタルフードを装着して使おうと思う。それとコンパクトなのは良いが絞り環が操作しにくい...絞り優先AEなら問題ないが、マニュアル露出だと具合悪い。このところヘキサーやCLE.M7ばかり使ってきたので余計にそのように感じるのだろうが。 *追補2/読者のベッサR2ユーザーから貴重な情報が寄せられたので掲載する。このように経験に基づいた情報はユーザー全体に有益であり、メーカーにとっても次の改良のために重要だと思われる。 「新発売された昨年4月にカラースコパー50mmレンズと共に購入、ひと月ほど使用したのですが、シヤッターレリーズの重さと、露出計電源ONまでの押込みの深さに馴染めず結局処分しました。この事は、貴殿の「カメラ談義55」に有ります下記文面にも記述されています。」 **ただしここでもまだ改善のいることがある。「シャッター半押し」が相当に深く、かなりレリーズ直前の場所になっている。Rでは丁度半分程度の場所で生理的にも違和感がなかったが、R2の場合、上述したとおりシャッターボタンの圧が重くなった上に深くなったのだから慣れるまでは「粗忽な人」や「急いでいる時」は気をつけないと思わずシャッターを切ってしまうかも知れない** 「昨日、大阪の某カメラ店に行った時に、ま新しいベッサR2の中古品が有りましたので、触らせて貰ったのですが、シヤッターレリーズの感触が、記憶にある昨年のR2と違っていました。レリーズ音の大きさ高さは同程度と思いますが、電源ONまでの押込み具合が、明らかに改善されていると感じました。早速、新品の箱を開けて貰って、確認しましたが、やはり改善されていると判断しましたので、ウルトロン35mmと一緒に、購入してしまいました。フィルムを入れての使用は、未だですので、他の改良点については判りません。」......原文のまま。ページを借りてお礼いたします。 *追補3/とうとう最新のレンズ(ノクトン35mmF1.2)はMマウントで出た。ボディはM/レンズはLという図式は崩れたのだろうか?肝心のライカも他レンズメーカーとのOEMレンズが増えていることもあり、銀塩アナログカメラの市場の維持にはいい事だろうが、独自性はどこかへいってしまう。このままではライカワールドの将来にも影響が大きくなるだろう(そこまで心配は不要=私の現役の間は保つだろうから)。 久美浜への旅で友人が取材中の私を撮る=ベッサR2もライカ以上に「隠れるカメラ」である。どう見てもCLEやR2はライカより素人っぽくて実に役に立つのである。 |