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コシナ=フォクトレンダー ベッサ R2A
   

熟成の度合いの高まったコシナ=フォクトレンダー

2004年の末から、予測されていたベッサのAEモデルが2台発売された。両者の違いはファインダーの倍率のみで、今までの0.7倍に等倍が加わった。これもエプソンRD-1で試されたファインダーで予測のとおりであった。コシナ=フォクトレンダーのボディもここまでくると、そしてライカブームの去った今となると新鮮味はなく、人気も今ひとつのようだ(同時期にコシナ=ツアイスイコンの発表があったせいもある=不思議な営業戦略に写るが・・・)。しかし久しぶりに書くことにしたのも、このボディの性能や操作性に見るべきものを感じたし、さっそく「常に使うボディ」になったことも報告したいと思ったのである。

さて先行モデルのR2と比べつつ見ていこう。持つと少し重く感じた。カタログを調べると(R2=425g/R2A=430g)ほんの少し重くなった程度だが、感覚的には更に重くなったように思った。これは軍艦部のデザインの変更により重厚感が出たためだろう。他にも改変点はあるが、AE以外ではこの軍艦部の変更が最も大きいだろう。 変更点をあげると、1.まず全体デザインが従来からの斜めのカットがバルナックライカのようなスクゥエアなカットになったこと。 2.シャッターリングにAポジションが追加され、径が約1mm大きくり、高さも2mm高くなった。これにより回しやすくなった。 3.当然シャッターボタンも高さが2mm高くなり、ボタン回りにロックリングも増設された。 4.巻き戻しクランクのデザインがバルナック風に変わった=ただし見た目だけで、実際の操作性はR2のものとそれほど変わらない。 5.巻き戻しクランク基部に、バルナックボディに見られる視度補正レバーに似たデザインの裏蓋開閉のロックレバーが新設された=これはあったほうがいいだろう。不用意にクランクを引っ掛けてポンと裏蓋が開くようなことは防止できる(もっとも、そのような事故は一度もなかったが・・・)。 6.ボディの裏側から見ると、巻き上げレバーの下にAEロックボタンがつき、フアインダー接眼窓の角から丸にデザインが変わり、これは多少見やすくなったと同時に窓の周囲にゴムのアイピースが付いたためメガネをかけた人には都合良さそうである。外見からは軍艦部以外は材質や仕上げも含めて変更はないと云っていい。しかしこれによって、趣味性としてはかなり良くなった(主観的だが)し、機能的にも少しの前進があつたことは評価できるだろう。

さて動かしてみよう(従前どおり左右の表記は撮影者からのものである)。 まずフィルムを入れる。巻き戻しクランクを基部のロック解除レバーを手前に引きながら上に引っ張ると、ごく普通に裏蓋がポンと開く。フィルム室にパトローネを入れ、上に上がっている巻き戻しクランクのシャフトを下げてパトローネを固定する。フィルム先端を巻き上げ軸のスリットに差し込み、軽く巻き上げ、上下のギアにパーフォレーションを噛ませ蓋を閉める。そこから2カットの空シャッターで完了。昔からのごく普通の操作手順で間違えることはない。空シャッターを切るときに巻き戻しクランク上の「赤玉」の回転を見ることも忘れてはならない。

次に撮影にはいる。フィルムの巻き上げはほとんど変わらないが、「少し」巻き上げ時ののゴリゴリ感が緩和されたようだ。しかしお世辞にもライカのようなスムーズさはなく、カタログにある「スムースな巻き上げ」とは言いがたい。しかしライカと比べることに無理があるだけで、ラチェット巻き上げの確実な動作は機能を充分果たしていると言える(予備角45度、巻上角120度、適切だ)。 シャッターダイアルを操作すると、R2より大型化されただけでなくダイアル回りのギザのカットがラインからダイアになって、見た目と感触の両方が向上した。回した時のタッチも「カタンカタン」から「トントン」と丸くなった。Aポジションは+−2段の補正がかけられるようになっていて現実的で使いやすい。一般的には便利なAEからマニュアルへのシフトのロックボタンもダイアルのセンターに付いていて、これも分かりやすい=ただし私は声を大にして云いたいが、国産の機械が判で押したようにとるスタイルを歓迎していない。M7のようにロックボタンの解除なしにシフトできるほうが合理的である。不用意に動かないように・・・ということになっているが、ファインダーに警告は出るし、そんなに簡単に動くタッチではないし、露出補正が+−2もあって、それも「不用意に動く」と使い物にならない原板になること受け合いである。悪しき慣習、まったくもってライカに学んで欲しい。 さて話を戻して、露出を無補正で撮ると1/3-1/2程度のアンダーとなって、ポジ向きと云うよりも不具合があるレベルである。もちろん私のコシナ=フォクトレンダーはボディ・レンズ共にほとんど発売直後のモノなので初期不良と思われる=いままでの初期の不具合はすべて後日改良されている。 したがって感度をISO100なら80程度に設定しておき、あとは露出補正でしのいでいる。露出がアンダーに寄っているだけで、中央部優先のTTL−AEそのものは正確に働いている。ボディを開けるのは避けたいので調整には出さないことにした(時計と同じでケースを開けることそのものにもリスクがある)。

ピント合わせは全く同じだが、距離計のフレームが今までの楕円形からライカと同じ長方形に変わった。これは目立たないが、心理的にずっと合わせやすくなり合理的な変更である。昔ライカM2の距離計フレームに深度確認用の切り欠きを設けたが、ピント合わせに目障りで廃止されたこともある。これ以外はR2と同じ景色が見えている。ファインダー全体は最良の部類でライカにもひけはとらない、たいしたものだ。

シャッター半押しで測光開始。シャッター速度が赤色ダイオードで出てくる。なかなかこった表示で、マニュアル露出だとシャッター速度が設定値に表示され、その左に現実の適正速度が点滅する。絞りを操作して点滅がなくなったら適正値になる。ことによると(つまり慣れると)ライカよりいいかも知れない。少なくとも新鮮である。AEにすると適正速度値が出るだけなのは云うまでもない。半押しの点灯時間は実測9秒であって、R2の実測14秒よりも合理的に感じる。ちなみにR2の露出のダイオード表示はライカと同じ三角・丸方式である。 シャッター半押しの押す重さはR2よりかなり軽く、ストロークも浅い(R2も後期は改良された)ので使いやすくなった。だが調子に乗ると、軽いだけでなく半押しのかかりも浅いので、思わず半押しを通り越してシャッターを落としてしまうことがあるかも知れない(たぶんこれも改善されるだろう)。 AEロックは構えた時の右手親指の場所にあり、押している間だけホールドされる。これには多少の改善を望みたい=まずシャツター半押しで通電させてからの9秒間にロックせねばならないが、ロックボタンだけで測光開始できるほうが合理的である。なぜなら要ロックは事前に分かってることで、タイミングの遅れはこの手のカメラには致命的だからである。実のところ「シャッター半押し−ロック」の短時間の操作時に誤ってシャッターを落としてしまうことがあるのだ。もうひとつロックした際はボタンを放しても数秒間はホールドできた方がずっといいことである。これはボタンの位置が決まっている以上、撮影のポジションによっては窮屈になることがあるためである。どうだろうか?と実験している間にも思わずシャッターを落としてしまった!そういうレベルの不具合さを知っていて欲しい。露出そのものはAEロックをかけている間はホールドされるため、9秒間ルールには縛られず良いことだと思う。つまり普通の測光時は多少軽くて速いのはむしろプラス要因だが、ロックするような慎重な撮影時はゆっくり確実なのが有意なのだということだ。

撮影が終わると、ボディ底のボタンを押し、巻き戻しクランクを出して巻き戻す。ここは以前とデザインは違っても、操作感は似たようなものでチマチマとしていて、あまり良いとは思えない。なおバルナック風のダイアカットのノブに見えるものは飾りであって使用はできない。開閉ロックレバーを操作すれば引き上げられるが、どうしても裏蓋が開くので不可能なのである。飾りでも意匠が優れているため気にならない。

総体としてみると、デザインの変更も大きいし、機能的にも進化が見られ、ベッサシリーズの有終を飾るものかと思ってしまう。これで充分、これで何でもどこでも撮れる...これを買ってからはヘキサーより出番が多くなった。比較的短期間に熟成されたいいボディと思う一方、そろそろ進化の袋小路に入りつつあるとも感じている。 カタログからもR2は消え、おそらく既に作ってはいないTやRC/RS系のボディと共にR2/3Aが並んでいる。たぶん主力はコシナ=ツアイスイコンに移るのだろうが、それも銀塩の終焉と共に展望は明るくない。

軍艦部が変わるだけで印象がずいぶん変わる。好みの問題としても、私はR2Aの方がずっと良くなったと感じている。私の好みでトリガーワインダーはどちらにも着けている=単純な好き嫌いではなく理由がある。トリガーで巻き上げることはないが、バランサーとして、あるいは縦吊りのために、そしてホールディングポジションのために必要なのである。

大きさは135.5X81X33.5mmでまったく同じ。上から見ても重厚感・精密感が高まったと感じられる。特に巻き戻しクランク回りが違うカメラのようである。

一部のレンズを除いて、たいていのL&Mマウントレンズは装着可能だ。普通のレンズの中では、新旧スーパーアンギュロン21mm、エルマリート28mm/1st、DRズミクロンなどが装着不可。R2と同じラバー貼り革も質感が良くて暖かみがある。マウントのボディ側は精度が詰められていると見えて、レンズによってはライカより嵌合が硬いことがある。

*それにしてもベッサシリーズはシャッターボタンの感触(重さやストローク)がモデルによって違いすぎる。不思議な傾向である。改良は加えられるのだが、今までのモデルではRが一番バランスが良かったことを付記しておく。

ズミクロン90mmF2/2nd をとりつけた。レンズの大きさが目立つが、こういうときこそトリガーの装着が大事。距離計がいいので望遠も90mmなら大丈夫である。

ダムサイトの町、奥吉野・川上村にて。 トップの組み合わせ(+Summaron35mmF3.5)で撮った。どうせライカボディだと35mmフレームの出ないレンズなので、ベッサ系には使用頻度が高い。無補正でのAE撮影だが何の問題もない。私はAEカメラは機械任せ、非AEカメラは逆に自分で露出を決める傾向にある=つまりマニュアルのTTL露出計は参考程度にしか考えない習慣になっている(M6/5など)。はたと気が付いた...適正露出は永遠の難題だが、気軽に考えた方が精神衛生上好ましいのである。AEだと「何も考えず」、マニュアルだと「自分の思ったとおり」撮る=マニュアルでチマチマと露出計の値と合わせるのが面倒で、撮りたいように撮るのがいい写真を撮る秘訣なんだろう。銀塩カメラの全盛期がマニュアルTTLだったのは、今思うとつじつまの合わない行為を繰り返していたということとなる(2005.12.19)。

グレイモデルがやってきた=これは予想よりいい仕上げだ。WEBで見ているとザラザラしたような仕上げに感じていたが、実際にはかなり綺麗なグレイペイントである。レバーやノブ類は黒で、いわばグレイパンダ仕様と言えよう.グレイが完全なマット仕上げなのに対して、部品はややツヤのある黒なので余計にそのように見えてしまう。ともあれ強度はこれから分かるとしても全体には良好。操作感はやはり初期のモデル(私のベッサはどれも出てすぐの製品)より改善されていて、特にシャッター半押し状態は作りやすくなった。レギュラーモデルである私のR2Aは多少ギクシャク感があり、半押しをしているうちにシャッターが切れてしまうこともあった。たぶん使ううちに他の改良点も見えてくるだろう。  R2Aをすでに持っていて、今回R3Aにしなかった理由は「0.72倍ファインダー」にライカM2−MPを通じて慣れきっているからだ。M7も2台とも0.72だ。

ノーマルモデル(初期型だが)と違う点は巻き戻しクランクの処理がある。旧型ではそれまでのベッサシリーズと同じくワンアクションでクランクが立ち上がったが、これは折れ曲がるクランクとなっている。どれほどの実際的な効果があるのか疑問だが、仕上げに手が込んでいて、よりマニアックになったことだけは確かだろう。

これが旧型のもの。フィルムを巻くと真ん中の赤玉が回り、ノブ自体は止まったままで、新型は全体が回る。作りは新型が細かくなったように見えるが、機構的には旧型の方がコストがかかっているかも知れない。

ズマロン35mmF3.5を取り付ける…このレンズはM2には対応しておらずM2以降のボディに取り付けると50mm枠となる…だからフレーム手動式、かつファインダー倍率を考えると一番理にかなっていると思われる。少しフロントヘビーではあるが大きさも丁度いいだろう。

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