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Leica MP

ライカはLeicaMP 

ライカMPが2003年に登場して、どうも最初は少し馬鹿にしていたきらいもあった。と言うのもそれまであったM6系の記念モデルのラッシュを眺めていて、その延長線上かと思っていたのである。その直前に日本限定で出されたMP6はM6そのものを化粧直ししただけのモデルで(00記念モデルというのは、興味はなかったが、それなりの意味はあるのだろうと思っていた)私の感覚では法外な高値がついて、またそれが投機の対象となりさえした(400台が即日完売)。私はノーマルのM6を1998年に新品で約18万円で買ったが、MP6はその倍以上の価格で取り引きされていた。私には理解しにくい価値観であった=もちろん商売としての演出された限定モデルブームはライカ社も含む業者的な思惑として理解はできる。理解できないのは健全なはずのライカファンが、たとえ一部とはいえこれに乗って投機に走ったことである。コレクターは以前から相当数が存在していることは承知しているが、彼らはコレクションが趣味であって、投機の対象としている訳ではない(告白すると、いつの間にか私もコレクターとなった=コレクターにはある種の「くくり」があるが、これは別稿としよう)。

そんな訳でMPがレギュラーモデルとして登場したときも「またか」と思った。諸元を見ても、どう考えてもM6そのもので、外見はM6TTLの時のミレニアムモデルと同じように昔風のM3/2にならったモノとしか考えられなかった。しかし、そう言いつつ発売後1年経って1台導入して使った感触が「悪くない...」のだ。今回は何が「悪くない」と思わせたのか語りたいと思う。

まずは外見から。ほとんどM6だ。好みは別として、M6TTL/M7の進化はどうなったのだろうと思った。以降はだいたいにおいてM6との比較を基本としよう。0.72モデルにのみ設定されたブラックペイントモデル(以降BP)を買った(これはたいていの人がそうするだろう)。しかし私はシルバーモデルと比べてみた。これは仕上げが全然違った。シルバーモデルは梨地部は別としてメッキ部の仕上げがチャチで安物の電化製品並みと感じられた=どうしてもシルバーと言う人はM3/2の部品を調達して取り替えられることを思い出して欲しい。対してBPはミレニアムモデルも含む限定ライカのBPより丈夫かつ重厚な仕上げで(細かな部品の質の低さを塗りで被ったとも言える)悪くないのである。実際ミレニアムモデル等はピカピカした黒で被覆力も小さいように思われる。ただし実際に普通に使っている人を見たことがないので私の偏見かもしれない。私はM6が大好きなので、BPが安く手に入ったと割り切れば何も問題はない。そしてM6のトップカバーのノッペラボーの部分に「Leica」の彫りが入ったこともデザインとしてはいいと思う(M6TTL/M7ジャパンモデルのLeicaのスクリーン印刷は問題外=すぐに剥げる)。今までのライカでもM3/2/4のようにデコラティブに彫りが入っているより、よりすっきりしたM5あたりの方が好きだった。正直なところM6初期のトップネームやこのMP程度のさりげないロゴがいいと思う...ここら辺は大合格。シリアルナンバーも字体も含めてこれでいいだろう。トップカバーも真鍮らしく、仕上げもエッヂの立ったもので悪くない。トップカバー両端のプラチップ(吊り環からの傷防止用)もなくなった=これは元々がナンセンスなモノなので、ない方がいいと思った=当然に傷は付くので心配な人用にガード付きのストラップが外品で多種用意されている。

コシナ・ツアイスのBPレンズを着けるとなおさら色や仕上げが合っていることが分かる(あまり合っていると日本で塗っているのでないかと思ったりする・・・)。 次に巻き上げレバーがやはりM3スタイルとなった。だがM4から採り入れられた「折れ曲がる巻き上げレバー」の優位性は動かない。実際に使用したとき、特に速写時には差が出る。しかしノンビリと散歩道の友として使うのなら何ら問題はない。速写はヘキサーRFがどっちにしても圧勝なのだから、ここは「Leicaを使う」で割り切れる...そうなるとカッコをつけてM3スタイル、これは悪くない。問題は巻き戻しノブである。これはやっかいな仕組みを復活させてしまつた。これもM4から始まった「斜めクランク」が速くて確実である。あるいはM5やコシナ・ツアイス、CLEも採り入れた「底蓋クランク」も合理的でいいだろう。M3/2式では巻き戻しが遅くなるだけではなく指が痛くなるのである。ライカ社では「斜めクランクよりM3式の方が耐久力がある」とのコメントがあるらしいが、それではM4(何と!40年も前の「改良」だ)以降の歴史はどうなるのかと問いたい。本音で「格好をつけただけ」と答えるべきだろう。ライカ修理の技術者に聞いても斜めクランクの故障などほとんどないとの事である。私も見たことがあるが、かえってM3式の引っ張り上げるという行為でのノブシャフトのガタの方が多いと思われる。ライカ社も巻き戻しの不合理は分かっていて、外付けの巻き戻しクランクを純正で用意している。馬鹿げた話だが、これも枚数を撮らない「遊び写真」のための道具として割り切れば全然悪くないと感じられる。そもそもライカはMPを「写真機」というより「趣味のいい洋品」と見ているようだ。そう考えれば私のたくさん持っているメカニカル時計やクラシックカーと同じとなり、悪くない趣味と思われる。

そう考えると(趣味のいい洋品)フレームセレクターレバーも旧式がいいとなる。私にとってはあってもなくてもいい装置なので趣味がいいかどうかは大切だ。

私がM6シルバーをM2の部品で改造したのも格好いいからで、本質的なことは関係はない=仕事撮影はヘキサーRFやM7が多い。

シャークスキン風の貼り革も最初は違和感があったが、使っていくと手触りがサラッとしていて、M3以来のゴツゴツしたグッタペルカ(いつから天然樹脂から合成樹脂に変わったか知らない)より良いかも知れない。ここら辺の材料学的改良はアナクロニズムではなく思い切ったものである。コストダウンのためでもあるだろうし、また限定モデル用にはグッタペルカ風が復活すること請け合いだ。そしてシャッターダイアルがM6のプラスチックから金属に変わったことや、シャッターダイアルに電源OFF位置があること、電池室の蓋がオプションとしてコインでの開閉のできるものが付いたこと(ノーマルも付属)などは明らかな改良点だと思われる。ここらあたりはライカ伝統の斬進主義が残っているらしく微笑ましくさえある...何しろ定価で似たような定格のM6TTLから10万円ぐらい高くなったのだから。現在併行品の実勢価格は27−29万円、これが2006年2月に値上がりすることになっている(ライカ社の定価アップ)。

内部の話に移ろう。といっても専門家ではないので詳しいことは分からない。まずはファインダー=ファインダー対物窓のコーティングの耐久性への不安はM7の使用を通じて、それほど気にしなくてもいい程度の強度だと分かった。昔のカメラのコーティングの耐久性より格段に改良されているようだ。しかしまだ使用は3−4年程度、正確な答えはまだだ。特筆していることとしてファインダーのハレ防止対策がなされている(同時期製造以降のM7も同様の対策がされている)。これは純正/非純正でM4−2/M4−P/M6/M6TTL/M7でも改造可能である。実際にファインダーを覗いて実験すると、確かに効果はあって、M3と同じとはいかないが、M2/M4と変わらない性能になった=ただしこれは「ハレ」のことだけで、ファインダーや距離計の見えの良さということでは、簡単な結論は出せない。ファインダー内の実像、距離計像、フレームなどの視度や色、ファインダーそのものの解像力など難しい要素が多く、古いライカが良いとは言っても経年変化や整備状況でも大きく変わるのである。しかしMPのファインダーは「かなり良好」で悪くないだろう。カメラ内部の仕上げはコストダウンが見られ(ここでは詳しくは書かない)性能とはあまり関係ない場所はM4−P以降、だんだん内部は安物風になっている。ライカ社の言い分は「耐久性、精度、信頼、革新」となっているらしいがあまり説得力はなさそうだ。 M6などより各部品の精度/性能を煮詰めてあると言われている。しかしファインダーを除いてそれを感じることはできない。M6TTLでシャッター音は改善されたと感じたし、MPの巻き上げのスムーズさも多少は感じられるが、M7でも似たところなので、「特にMPが」と言うほどでもないだろう。だがライカ社の話を除外して触っていると「趣味のいい洋品」「我が友ライカ」と言う趣旨なら、そのとおり最高なライカと思われる。使いやすくはないカメラだとしてもMライカの50年来のエッセンスは感じられ、あえて「ひょっとしたら最後のメカニカル銀塩Mライカ」になるのかも知れないと思った。今からM6を買うのならMP(特にBPモデル)を考えてみてもいいだろう。もちろん少し経済的な余裕があるならと付け加える。

CS28mmF3.5BPと。色も艶もピッタリと合っている...まさかコシナがボディを作ったのか?とすら思ってしまうぐらいだ。現代の材料と塗りは別のメーカーであっても偶然/必然に同じような仕上げになるのだろう、としておこう。コストダウンの影は見え隠れするが、極めてすんなりとユーザーに迎え入れられていくことだろう。好みの問題は別として、ボディとしての完成度は高い。

0.58ファインダーモデルが生産中止、ライカ社が2月に値上げの決定と聞いて、あまり売れてはいない在庫のボディを買った。これからどうなるのかは分からないが、予想通りライカジャパンの併行品への圧力もあり、銀塩の終末も感じさせる昨今、新品のライカボディが市場から少しづつ減っている(閉鎖した店も多い)。そして中古ボディが目立ってきている=やや安価。そんな状況と関係あるのか、私はM6系(M4-P/M6/M6TTL/MP)の各種ボディを集めつつある。すでに全部一応持ってはいるのだが、様々なバリエーションがあり、記念モデルとは異なる楽しみ方をしている=色々と未知の発見もある。  写真はリコーGR28mmF2.8と...かなりよく似合う。ストラップはアルチザン&アーチストのACAM200、前のタイプはもっと良かったが、それでもこれを気に入って使っている。

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