home top

ツアイスイコン

遅れて、しかしとうとうやってきたライカ・ツアイス

第一印象で述べたとおり、同じコシナのベッサR2Aと比べて、巻き上げや各種ダイアルなどの操作感はスムーズになったし、レンズマウントの嵌合も軟らかくなった。シャッターは基本的に同じと思われるが音はやや軽くなっている(ボディの素材/構造が違うだけかも知れない)。質量460gとMPの600gと比べてずいぶん軽い(サイズはほとんど同じ)。デザインは往年のCLEそっくりで使用感も同じようなものだ。気楽に使えるカメラで歓迎したい...だが値段がR2Aの倍にもなった割には「たいして差はない」のがユーザーにどう受け取られるかと思う。 2回使っただけでの問題点を指摘しておくと、ファインダー像がやや甘い=まさかファインダーレンズ系の収差が大きいとは考えられず、おそらく視度が遠視型になっているようである。視度補正で対応できるだろうが、高齢者向きに作られているとすれば「Zeiss Ikon」ブランドと合目的的とすら思われて頬笑ましい。もちろん目くじらを立てて言うほどの視度のズレとは言えない。そもそも私は近視なのだから。もう一つ、ファインダーフレームの自動切替は進歩としても、28/85、35、50mmと4種類しか内蔵されておらず、コシナ・ツアイスZMレンズとの整合性は計られているとは言え、ユニヴァーサルマウントとしてのMマウントを考えると疑問を感じる(ここはヘキサーRFが上)。ひょっとしたらCLEの時もそうだったようにライカ社との「約束」があるのかも知れない。更に外装の仕上げにバラツキがあり、3台のボディを見たが、ペイントの塗りむらや貼り革(人造皮革)に個体差が見られた(ペイントはMPが上=昔の国産一眼レフはもっと上)。ともあれ文句はつけても気に入っていることは宣言しておく。切望していたCLE-2がこんな形で出てきたのだから...軽い気分で使いたい。純正のストラップは重苦しいので店に転がっていたニコンの軽いナイロン製のものを装着した。

ボディデザインを見ていこう。カメラを持ち歩くときに見える角度から...前の角のとがり具合、後ろの角のアールはCLEそっくりだ。大きさはともかくとして人造皮革の質感といい意識しているとしか思えない。必然性もあるのだろうがボディ上面のレイアウトもよく似ている。CLEはボディ本体がプラスチック外板でツアイスイコンはブラックペイントである。ライカMPのペイントより質感は落ちるし、私の見た別の個体はアクセサリーシューの下側(AEロックボタン)のある面に塗りむらがあった。巻き上げレバーは指当ての部分が別体に見えるが実際は一体式でデザイン上の処理のようだ(ここもBP)。ここでBP処理でないのはシャッター速度の表示板だけで、ここはアルミ系の板に黒メッキ(しかし文字は彫ってある)仕上げでBPがテカテカ仕上げではないため違和感はほとんどない。アクセサリーシューとシャッターボタンまわりのクロームメッキは少しピカピカしすぎていて、白にせよ黒にせよライカやヘキサーRFのようにマット仕上げが好ましいと思われる。シャッターボタンはON/OFFリングがあり、操作も簡単で当然の標準装備だろう。押した感じは少しぎこちなく、誤操作を防ぐためかも知れないが抵抗が大きい(接触抵抗とスプリングの強さ)。ただし動き自体に節度があり、シャッター半押しの状態は作りやすく(2段階にハッキリと動く)間違ってシャッターを落とすことはないだろう。シャッターダイアルもライカM7と同じようにA位置でロックがかからず、すぐにマニュアルに移行できるようになっていて、機能満載の国産カメラのなかで「良好!な退化」として評価したい...カチャカチャ触っている間にチャンスは去っていき、2度と同じ機会は得られない、やりなおしはきかないんだ(HCB)。このAE−露出補正(M7はこれが弱い)−マニュアル移行が1ダイアルで簡単に分かりやすく操作できることに、このカメラの魅力の大きいひとつがあると言える(私がフィールドを歩きながら写真を撮ることと関係ある)。ただし苦言を呈するとフィルムカウンター窓は明らかに見づらい=凸レンズの曲率の問題なのだが空や照明の反射で、ライカやベッサより明瞭性が低い(この点はヘキサーRFの液晶表示がいい)。もうひとつはAEロックはシャッター半押しのM7式がベスト、あるいはヘキサーRF式にAEロックとAEコンティニアス選択式がいいだろう(ツアイスイコンの位置と操作性ではやりにくい)。フィルムの巻き上げはベッサに比して軽くて滑らかになっている(分割巻き上げもスムーズ)...しかしライカ並とはまだ言えない。シャッター音もベッサよりやさしく、しかし「ベシャッ」と切れる。ヘキサーRFと似たようなものだ(音は少し安っぽく、しかしやや湿っぽい金属膜シャッター音...こんなものだろう)...やはりM7に大きく劣後する。

愛らしいCLE=今でも2台とも稼働しているし、たいていの場合フィールドへ付いていく。小型で28mmのAE撮影に割り切れるため。ストラップも片持ち式にして吊る。

別の角度から(レンズはキヤノン28mmF2.8)。表示やレバー/ダイアル類の処理はスッキリとしていて好ましい。クラシカルなデコレーションを好む人もいるが私は実用本位に考えると「スッキリ簡単」がいいと思うし、それが美しいと感じる。ボディ前面も上面もなるべくフラットにデザインされ、M3−M5にあるような「指が当たる」ようなことはない。フレームセレクターもないほうがいいと断言できる=これで次のレンズの選択を確認しているようではダメであり、たった3−6種類の画角なのだから訓練で肉眼で分かるようになってほしい(慣れた人はたぶん全員フレームセレクターでは確認しないだろう)。その意味ではM6−MPのように対物窓(ファインダーや距離計、採光窓)をボディとフラットにしたらもっといい。凹ませたり飾りを付けることは埃や汚れをためることになり、そういう意匠自体に何もメリットはないのだから(見た目も大事とは分かっている...最近私の撮影が神経過敏になっているせいもある)。

底から見る。M5、CL、CLEと同じような景色があり、これもシンプルで好感を持つ。左から三脚ネジ穴(置いたときの平行を保つためあえて突出させている)、フィルム巻き戻し用ロック解除用ボタン(古くさい機能だが何十年も同じというのは完成された機構なのだろう=ライカも同じで頑固に軍艦部下のレバーによるロック解除に固執している)、電池室の蓋(これも昔から同じ機構=コイン/私は蓋より弱い材質の1円玉を使う=バッテリーはM6と同じでCR1/3N1個かLR44X2...M7の半分の電池でOK=M7の電気効率の悪さが分かる。倍なのにバッテリーは早く上がってしまう)、巻き戻しクランク=大型で矢印が表示されていて慣れると使いやすい。何と言ってもM5と同じ(!)...37枚撮って1回使うだけのモノは関係ない場所に引っ込んでいるのがいい=これが本当のところだろう。CLEのようにフレームセレクターがなければいいというのはこの角度から見るとよく分かるだろう(そして使用すると)。ボディ右肩の「ZEISS」の奇妙なバッジもない方がいい=Zeiss Ikon の誇らしいロゴだけでいいではないか!充分ツアイスだ。貼り革は(3台比較)個体差があり、本革?と思うぐらい模様に違いがある。別に不良品というわけではないが一応選んで買う方がいいだろう=BPの仕上げと同じで手作り風。 色々難癖をつけるのも後発機としての宿命=期待がある。実際問題として今はこれを最も使っているのが現状だ。雨の日はベッサ系(ずぶ濡れになっても惜しくない=性能は同等)、たくさん撮るときはヘキサーRF(もちろんモーター装備のせい)、遊びで軟派に撮るときは新MP(もちろんBP)、ヘビーな気分の時はM7、そして押さえはいつでも「我が友CLE」、その他は「ボチボチ使う」...昨日(2006.7.8)は奈良の御所市の寺巡りへM6+GR28mmF2.8をデジタルカメラのサポートとして持参(いま進んでいるプロジェクトはすべてデジタルで撮ることにしている=それだけだと不安なので「押さえはライカ」)。軽いボディとコンパクトなレンズ、ツアイスZMレンズより小さなライカマウントレンズが主役となる。フレームは28/85*50*35mmとしか出ないが私には充分だ=28mm以外に使うことはまずないだろうから。適切なデザインと配置、貼り革の質感やBPの感触など撮影においての不満はなにもない。ベッサに比べて倍の金額をどう考えるか?これには「it's cool」とでも答えておこう。コレクションと割り切る人と「かなり使う人」には価値があり、なんとなくRFカメラという人には少しお金を足してM6の中古を、実用本位!の人にはベッサR2A+好きなコシナ=フォクトレンダーレンズ1本(どちらも現在底値)を勧めたい。

もう一つの評価できる点はファインダー接眼部だ。ベッサR2Aでもそうだったがファインダー倍率は同じでも(0.7)接眼・対物窓を極力大きくとることにより、実質的に見える範囲は広くなる。ヘキサーRF(最近のライカも)は倍率を0.58とすることにより28mmフレームを見やすくしているが、コシナは一貫して「窓」にこだわっている=成功だろう。等倍ファインダーで40mmを覗いても同じように見やすい。本にもよく出てくる表現=ライカ0.72ファインダーの28mmで「目玉をグルグル回す」のはM4−Pの時から延々20数年の儀式だった。ライカは交換ボディで(あまりに高価すぎる)失敗した...M6TTLでの在庫の山でライカ社は傾いたと言われている(もちろん0.58/0.85ファインダーボディのせいにするのは悪い冗談)。ワイドでの見やすさは倍率を触るよりツアイスイコンのようにファインダーそのものの改良が大事だったと言わざるを得ない。このカメラのおかげで28mmは圧倒的に使いやすくなった。ヘキサーRFやM7/0.58でも同じじゃないかと言われそうだが、それは違う。フレームは単に画角を区切るものかも知れないが、被写体をファインダー内でなるべく大きく見たいのは撮影上あたりまえのことなのだ。ベッサR2Aでは(たぶんライカとの「約束」で28mmフレームを入れなかった)なんとなく見やすいと感じたが、ツアイスイコンではっきりと体感できた。あとは改良でファインダー像/距離計像のシャープさを前進させて欲しいものだ。

バックドアを開けてみる。ベッサ系統とそれほど違わない。フィルム装填には多少の慣れを要するが(いままでM5やCLE使った人は問題なし)特別な癖があるわけでもないため数本扱えば大丈夫だろう。建て付けも問題なし。

ZMプラナー50mmレンズ装着。最高の仕上げだ。しかしレンズは小型のモノを取りつけたい。ZMレンズは25/28/35/50mmと持っているがどれも大きいため使用機会が少ない。ワイド系はどれも最高の性能を持っているだけに惜しい。コシナの研究者「ツアイス(当時の京セラ)のように大きくても良ければ性能は最高のものが作れるのに・・・」という言葉が思い出される。あとはゾナー50mmF1.5(滅びたレンズを現代の技術で蘇らせる=ヘリアーと同じ)だけは手に入れたいと思っている...これだけはツアイスに敬意を表してシルバーレンズとする。ツアイスイコンの白ボディも綺麗だが「あまりに綺麗すぎる」ので敬遠している=でもいつか生産を止めるとなれば買ってしまうだろう。

ついでにベッサR2Aの写真も載せておく。カッコだけ見るとこちらの方がマニアックに感じる。もう一度書く「性能は同等」。

思わぬ価格で限定販売がなされたので今日(7/25)買った。どうせ買うと言ってしまえばそれまでだが、なんでも7/8月だけ期間と数量限定で売ることになったようだ。店の方針ではなく仕切がこの期間だけ低くなった...メーカーや問屋(この場合フジ)も夏枯れ対策なのかと思ってしまう。ツアイスイコンのシルバーは明らかにライカその他より輝きが強く、GR28mmの地肌がくすんでみえる。見方によるとアルミのような感じもする...しかし原則として設定があれば白黒のボディを持つのだから、これでいいと思えば「なかなか綺麗」。BPモデルと異なるのは表面仕上げだけである。1台だけ持つならBPが格調があるように思う。だがボディ表面の強度なら当然シルバーだろう。

別角度から。薄くて軽いロッコールG28mmをつけると、さらに軽やか...上着のポケットにも簡単に入る。ストラップはA&A・ACAM-200=これもベージュは生産中止、在庫を除いて黒だけしかない。

*久しぶりに使おうと思ってフィールドに持ち出したらバッテリーが上がっていた。例えばCLEより電力消費が大きいようだ(ヘキサーRFはモーター内蔵にもかかわらず良好・ベッサ系もOK、M7は消費が大きい)。M7と同時に使ってみると(倍率はほぼ同じモデル)ファインダーの見えはこちらの方が良好だ。デジタルが主力となった現在、「押さえのカメラ」としてはツアイスイコン・ライカM7が良さそうに思う。 フィルムカメラとしては、ぜんぜん別のフォーマットであるフジTX−1/2を最も使っている。

*まだたくさん使ったわけではないので不充分な評価と思われる。今後も改訂/加筆を継続していきたい。        N☆GY

home top


copyright 1999-2013 nagy all rights reserved
inserted by FC2 system